こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。
「エージェントに求人を預けているのに、全然候補者を紹介してくれない」。これは、不動産会社の採用担当の方が口にする悩みです。
私は前職で、不動産に特化した人材紹介のエージェントをやっていました。何十社もの求人を預かって、候補者を企業にお繋ぎする側です。
その現場で、白状すると「この会社には積極的に紹介したくないな、、」と感じる会社が、確かにありました。意地悪をしていたわけではありません。意地悪をする余裕なんて、そもそもないんです。
手数料の条件は同じなのに、候補者を出す手が止まる会社と、良い人に会った瞬間に真っ先に浮かぶ会社に分かれる。その分かれ目を、紹介する側の実感のまま晒します。
不動産の人材紹介とは?仕組みと選び方
不動産の人材紹介は、許可を受けた紹介会社が候補者を紹介し、採用する会社が手数料を払う仕組みです。請求の時期は契約書で決まります。紹介が回ってくるかどうかの分かれ目は、この記事の5つの瞬間にまとめています。
人材紹介の仕組みとは?いつ、誰が払うのか
流れは、紹介会社との契約、求人票の作成、候補者の紹介、選考、内定、入社です。手数料がいつ請求されるかは、契約書で確かめます。
有料で人を紹介する事業は、厚生労働大臣の許可を受けた会社でないと行えません(職業安定法第30条第1項)。そして、手数料を払うのは採用する会社です。求職者から手数料を取ることは、原則として法律で禁止されています(同法第32条の3第2項)。
総合型と不動産特化は何が違うのか
紹介会社は、幅広い業界を扱う総合型と、業界を絞った特化型に分かれます。不動産会社が選ぶときは、次の見方で整理すると迷いません。
| 総合型 | 不動産特化型 | |
|---|---|---|
| 扱う範囲 | 業界・職種を幅広く扱う | 不動産(と建設など近い分野)に絞る |
| 担当者に聞くこと | 不動産の募集を最近扱ったか | 売買・賃貸・管理のどれが得意か |
| 求人票の相談 | 不動産の募集に対応できるかを、事前に確かめる | 取扱職種の範囲に不動産が入っているか(人材サービス総合サイトで取扱職種ごとの実績が公開されている) |
※定義にもとづく整理です。実際の強みは会社ごとに違うので、担当者に最近の紹介実績を聞いて確かめてください。
人材紹介のメリット・デメリットとは?
仕組みから整理すると、次のようになります。
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 費用 | 手数料の料率と請求の時期を、契約前に書面で確かめられる | 売買仲介の営業は1人で約150万円。3人なら450万円 |
| 工数 | 候補者との接点を紹介会社が作る | 見送り理由の返信や日程調整は、自社で素早く返す必要がある |
| 候補者の数 | 自社の求人に出会えていない人に会える可能性がある | 紹介会社に登録している人の範囲に限られる |
| 選考の主導 | 紹介会社が間に入り、条件のすり合わせを手伝う | 候補者との直接のやり取りが減る |
※仕組みと約150万円(理論年収500万円前後×30%)から整理した目安です。費用の中身は人材紹介の手数料相場に、計算方法と法律の上限を整理しました。
人材紹介が向いていない会社はどんな会社か
次のような状況では、紹介に頼り切ると苦しくなります。
- 一度に何人も採る場合:1人約150万円なので、手数料は人数分かかります
- 社内の決裁が遅い場合:内定後の返事が遅れ、候補者を待たせるかもしれません
- 選考の返事を速くできない場合:次の章のとおり、紹介会社の優先順位が下がります
採る人数と手数料の予算を先に決めてから、紹介会社に相談してください。
紹介会社は、どの会社に候補者を出しているのか?
分かれ目の正体は、そんなに複雑ではありません。エージェントが優先して紹介するのは、「決まりやすい会社」です。
きれいごとを抜きにすると、頭の中ではこんな方程式が回っています。
「内定が出る率 × 承諾してもらえる率 × 選考スピード × 単価」
この掛け算の値が大きい会社が、その月の最優先の紹介先になります。私は何十社も担当していましたから、良い候補者に会ったとき、真っ先に浮かぶのは方程式の上位の会社です。
| 方程式の要素 | 下げてしまう行動 | 自社で直せること |
|---|---|---|
| 内定が出る率 | 求める人物像が毎回変わる | 基準を言葉にして、会うたびに揃える |
| 承諾してもらえる率 | 候補者への対応が雑 | 面接の態度と連絡の質を整える |
| 選考スピード | 書類や面接の返事が遅い | 返す期限を先に決める |
| 単価 | 手数料の額(契約で決まる) | 契約書で料率を確かめる |
※元エージェントの頭の中の整理で、公的な統計ではありません。
だから「紹介してくれない」のは、御社がこの方程式で下位に沈んでいるサインかもしれません。では、何が値を下げるのか。次の5つが、自分で自分の順位を落としてしまう典型です。
紹介会社が「紹介したくない」と感じる5つの瞬間とは?
①選考が遅いと、なぜ紹介が止まるのか
最初に挙げるのは、選考の遅さです。
書類選考の結果が1週間後に返ってくる。面接の日程調整に何往復もかかる。この時点で、私たちの熱は静かに冷めていきます。
候補者が待ってくれないからです。書類の結果が止まると、候補者は「求められていないんだな」と感じ始めます。
基準は、書類が当日〜翌営業日、面接結果が翌日〜3営業日。守れている会社は、私の現場の実感で全体の約2割でした。詳しい基準と、遅れた会社で何が起きるかは選考が遅いと辞退される話にまとめています。
②フィードバックが無いと、次の紹介はどう変わるのか
見送りの連絡が、毎回「今回は総合的に判断してお見送りです」の一行。続くと、次に誰を紹介していいか分からなくなります。
私たちは、見送りの理由を手がかりに、次はもっと合う人を探します。理由が無いと、その学習ができません。的外れな候補者をまた紹介して、またお見送りになって、、という空回りが続き、正直「この会社は当てにくいな」と優先順位を下げてしまう。
具体的な一言があると、次の一手が打てます。書き方は、Before/Afterで見てください。
Before(NG)
今回は総合的に判断し、見送りとさせていただきます。
After(OK)
売買仲介の経験は十分ですが、当社は反響を月に数十件さばく営業なので、件数を追うより一件を深く見たい方だと合わないと判断しました。反響営業を3年以上続けた方なら、ぜひお会いしたいです。
※Afterの数字は書き方を示す例文です。自社の反響件数に置き換えて使ってください。
お見送りは、次への申し送りでもあります。
③候補者への対応が雑だと、承諾率はどうなるのか
これは、会議室の中では気づけません。面接後の候補者から私たちに戻ってくる「生の声」で、はじめて分かります。
- 「面接官の方が、ずっと腕を組んだままで怖かったです」
- 「開始時間に15分遅れてきたのに、謝罪の一言も無くて、、」
- 「志望動機を詰められて、まるで尋問みたいでした」
面接は会社が候補者を見極める場ですが、同時に候補者が会社を見極める場でもあります。初対面のお見合いで、相手が腕を組んで「で、あなたが私と付き合うメリットは?」と詰めてきたら、どんなに条件が良くても気持ちは離れますよね。採用もまったく同じです。
候補者に雑な対応をする会社は、辞退が増えます。辞退が増えれば、方程式の承諾率が下がる。だから私たちは、候補者を大事にしてくれる会社に、大事な候補者をお繋ぎしたくなります。面接の入り方は面接の質問を「志望動機」から始めた時点で負けですにも書きました。
④求人の魅力を言語化できないと、紹介会社は何に困るのか
「うちはアットホームで、風通しが良くて、やりがいのある職場です」。打ち合わせでこう言われると、内心「うっ」となります。悪気が無いのは分かるんです。
でも、これだと私たちが候補者に魅力を伝えられません。求人票は、会社が候補者を口説くラブレターです。そのラブレターが「優しくて、いい人です」では、誰の心にも刺さりません。
魅力を言語化できている会社は、事実で語ります。営業が何名か、反響のみか飛び込みもあるか、入社2年目の年収の実例、案件をどう共有しているか。
※書き方を示す例です。数字と中身は、自社の事実に置き換えてください。
ここまで具体だと、候補者に自信を持って「この会社、いいですよ」と語れます。求人票の書き方は売買仲介の求人票テンプレ3型に、そのまま使える形で置きました。
⑤「いい人がいたら」しか言わない会社は、なぜ後回しになるのか
最後がこれです。「いい人がいたら紹介してください」。丁寧なお願いに聞こえますが、私たちからすると「本気で採る気があるのか分からない会社」のサインでした。
いつまでに、何人、どんな理由で採りたいのか。それが無いということですから。今期、営業を2名採るのが最優先です、来月末までに1名決めたい、と言い切ってくれる会社と、「いい人がいたら」の会社。どちらに良い候補者を先に出すかは、明白ですよね。
紹介会社が動く依頼文は?Before/Afterで見る書き方
採用にコミットしている会社は、要件が具体的です。
Before(NG)
営業経験のある、いい人がいたら紹介してください。
After(OK)
売買仲介2年以上・反響営業の経験あり・年収500〜600万円で提示可能・個人裁量で動けるタイプが合う・来月末までに1名。
Afterまで書いてあると、頭の中で候補者のリストがパッと絞り込めます。なお、年齢や性別で応募を絞る書き方は、原則NGです。要件は経験や働き方で書いてください。
やりがちなNG例(この一言で優先順位が下がる)
つい口にして、紹介の熱を下げてしまう一言を並べます。
- 「一旦、社内で検討します」→ そのまま1週間音沙汰なし
- 「良い方だったら会ってみたいです」→ 基準が曖昧で、誰を探せばいいか分からない
- 「今は急ぎではないので、ゆっくりで大丈夫です」→ ではエージェントも急ぎません
- 「うちの魅力は、実際に来てもらえれば分かります」→ 来てもらう前に口説けない
- お見送り理由が毎回「ご縁がなく」→ 次に活かせない
どれも、うっかり出る一言です。紹介会社には「即決するほどの価値がない会社」というメッセージとして届いてしまう。ここが怖いところです。
紹介が回ってくる会社の共通点は?
晒す話ばかりでは不公平なので、逆も書きます。私が「この会社なら任せたい」と思った会社には、共通点が4つありました。
- 人事・面接官の人柄:候補者を対等に扱う。上から目線がない
- 採用へのコミット:「今期、営業2名が最優先」と言い切れる
- 基準がブレない:会うたびに求める人物像が変わらない
- レスが速い:連絡すれば当日か翌日には返ってくる
派手なことは一つもありません。全部、今日から意識できることです。
正直な本音を書くと、エージェントも人間です。報酬が同じなら、候補者を大事にして感謝してくれる会社に、良い人を届けたい。私はそうでした。
契約前に確かめることは?許可・手数料・返金の見方
紹介会社を決める前に、書面とインターネットで確かめられる項目があります。営業担当の説明を聞く前に、ここを一度見ておくと話の聞き方が変わります。
| 確かめる項目 | 見るところ |
|---|---|
| 許可の有無 | 厚生労働省「人材サービス総合サイト」で事業所ごとに確認する |
| 紹介実績・定着 | 同サイトで、就職者数と、期間の定めのない労働契約で就職した人のうち、就職日から6か月以内に離職した人の数(解雇による離職は除く)が公開されている |
| 料率 | 同サイトで、取扱職種ごとの常用就職1件当たりの平均手数料率の実績が公開されている(施行規則第24条の8第3項第4号)。契約書では、歩合や賞与を理論年収に含めるかを確かめる |
| 取扱職種の範囲 | 同サイトの取扱職種別の実績に、不動産の職種が入っているかを見る |
| 請求のタイミング | 内定承諾か、入社日か |
| 返戻金制度 | 同サイトの「返戻金制度」の欄と契約書で、何か月以内か・何%か・どの理由の退職が対象かを見る |
※出典:職業安定法第30条、第32条の16第3項、同法施行規則第24条の8第3項、厚生労働省リーフレット「民間人材サービス利用のポイント」。
手数料はいくらかかるのか
手数料は、理論年収に料率を掛けて決まります。不動産特化の紹介会社が公開している料金では、料率は理論年収の30〜35%です。年収600万円なら180〜210万円になります。売買仲介の営業では、理論年収500万円前後に30%を掛けた約150万円が着地でした。
手数料の決め方は、法律上2つあります。省令で定める種類と額の範囲で取る方法(上限制手数料)と、あらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表にもとづく方法(届出制手数料)です(職業安定法第32条の3第1項)。上限の計算方法は、人材紹介の手数料相場の記事で整理しました。
早く辞めたら返金されるのか
返戻金制度は、紹介会社が公開しなければならない項目の一つです(職業安定法施行規則第24条の8第3項第5号)。返すかどうか、いつまでに辞めたら何%返すかは、会社ごとに違います。
見るのは3つです。何か月以内の退職が対象か、期間ごとに何%か、自己都合のみか会社都合(解雇など)も含むか。厚生労働省のリーフレットにも、同サイトで確認できる情報として「返戻金制度の有無や内容」が載っています。返金の話にならないよう、内定から入社までのつなぎ方は不動産の内定辞退を防ぐクロージングに書きました。
人材紹介以外の選択肢は?使わない道もあります
人材紹介を使わない選択も、ありです。ただし自社で採ると、お金が手数と時間に変わります。「安い」わけではありません。
スカウトを数千通送り、返信には即レスし、面談で口説く。これを1か月の間に回し切る必要があります。1人あたりの実額は不動産営業の採用は1人いくらかかるのか、紹介・求人広告・採用代行の並べ方は不動産営業の採用を外注する3つの選択肢にあります。
媒体の払い方を比べたいときは売買仲介の求人媒体の比較を、応募が来たあとの電話の初動は応募が来たあとの24時間が勝負ですを読んでください。
使うにしても、入り口を整えてから、足りない分を紹介で補う。この順番なら、紹介会社にも優先してもらいやすくなります。
賃貸仲介の方は賃貸仲介の採用、繁忙期の前に慌てていませんかを、施工管理の方は施工管理の人材紹介に200万円払う前にを読んでください。施工管理は、200万円台を払っている会社もあります。
紹介される会社になるためのチェックリスト
そのまま使えるように、チェックリストにしました。
- 書類選考の結果を、当日〜翌営業日で返せているか
- 面接結果を、翌日〜3営業日で返せているか
- お見送り時に、具体的な理由をエージェントに伝えているか
- 面接官は、候補者を対等に扱えているか(腕組み・遅刻・詰問をしていないか)
- 自社の魅力を、数字と事実で語れているか
- 「いつまでに・何人・どんな人を」採りたいか言い切れているか
- 求める人物像が、会うたびにブレていないか
- 契約前に、許可と返戻金の条件を書面で確かめたか
付かない項目から直してください。
よくある質問
Q. 手数料を上げれば、優先的に紹介してもらえますか?
単価は方程式の一要素です。まずは選考スピードと候補者対応を整えるのが先で、単価はその次です。
Q. 選考を速くしたいのに、社内の決裁が遅いときはどうしますか?
おすすめは、採用の意思決定者を一人に絞り、その人に権限を寄せることです。採否を決める人を一人に決め、返す期限を先に決めます。全員の合意を待つ設計は、候補者を待たせます。
Q. フィードバックは、どこまで詳しく書けばいいですか?
一言でいいので、何が理由で見送ったかを具体的に書いてください。「経験は十分だが反響件数を追いたいタイプではなさそう」くらいで十分です。エージェントはその一言で、次の候補者の探し方を変えられます。
Q. 紹介会社は何社に頼んでいいですか?
契約書に「他社に依頼しない」という専任の条件がないかを、先に確かめてください。社数を増やすなら、どの会社にも同じ要件と同じ返信スピードで接することが前提です。
Q. 紹介された人は、必ず面接しないといけませんか?
契約に特別な条件がなければ、採否は会社が決めます。ただし、見送るときは理由を一言返してください。それが次の紹介の精度を上げます。
Q. 紹介が少ない、あるいは的外れな人ばかり来ます。
要件が曖昧なまま依頼していないかを見直してください。経験年数、年収の提示額、求める働き方を言い切った依頼文に差し替えると、紹介の精度が変わります。応募が来ない原因を広く見たいときは、「いい人が来ない」会社が見落とす3つのことも読んでみてください。
Q. 紹介会社を使っても、応募が途中で消えます。
紹介でも自社応募でも、最初の電話で人が消えることがあります。自社のデータは不動産の中途採用が難しい理由にまとめました。
濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。
採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。耳の痛い話もあったかもしれません。でも、今日挙げた5つは、どれもお金も人手もかけずに、明日から直せることです。
最初の「全然紹介してくれない」に戻ると、あの一言の裏側では、方程式の順位がそっと下がっていることがあります。求人広告にお金を積む前に、「紹介されにくい構造」になっていないかを見てほしいです。
自社の求人票と、選考の返し方が、紹介されにくい構造になっていないか。無料相談で、一緒に見ます。
求人の見せ方を整えたいときは、不動産営業の求人タイトルの付け方もあわせて読んでいただけたら嬉しいです。