こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。
「いい候補者だったのに、返事をしようとしたら他社で決まっていた」。不動産営業の採用をされている社長から、これを聞かない月がありません。
お疲れ様です、、。悪いことは何もしていないのに、気づいたら手元から消えている。いちばん納得のいかない負け方ですよね。
そして、この話にはたいてい続きがあります。「うちの条件が悪いんですかね」「やっぱり知名度ですか」。
違うんです。エージェント時代、私は不動産の紹介の現場で何百社と見てきましたが、この負け方の原因は、条件でも知名度でもないことがほとんどでした。
結論から言うと、選考が遅い。ただこれだけです。
そして厄介なのは、遅いことで失注しても、その理由が絶対にこちらへ届かないところです。候補者は「選考が遅かったので辞退します」とは言いません。「他社とご縁がありまして」と言って、静かに去っていきます。
今日は、その静かに去られる日数の境目と、明日から守れる基準の話をしたいです。
先に結論:選考スピードは施策ではなく、前提です
採用の打ち手というと、求人票を直す、媒体を替える、スカウトを増やす、という話になりがちです。どれも大事です。ただ、それらは全部「入り口を広げる」施策なんですよね。
選考スピードは、入り口ではなく入ってきた人を落とさないための前提です。ここが抜けていると、入り口をどれだけ広げても、同じ場所から漏れ続けます。
私が現場で見てきた感覚で言うと、こうです。
- 書類選考の結果は、当日から翌営業日まで
- 面接の結果は、翌日から3営業日まで
- 内定の通知は、即日から2営業日まで
数字だけ見ると、そんなに無茶なことを言っていないと思います。実際、無茶ではありません。
ただ、これを本当に守れている会社は、体感で全体の2割くらいです。裏を返すと、この基準を守るだけで上位2割に入れてしまう。採用でここまで費用対効果のいい打ち手を、私は他に知りません。
お金は1円もかかりませんから。
なぜ「遅い」だけで人が離れるのか
日数の話をすると、「1週間くらい、普通じゃないですか?」と言われることがあります。会社側の感覚としては、たしかにそうなんです。稟議もあるし、面接官の予定もある。
でも、候補者側にはまったく別の景色が見えています。
エージェント時代、書類選考の結果が1週間後に返ってきた会社がありました。結果は通過。喜んで候補者に伝えたら、こう言われました。
「もう気持ちが冷めました。自分は求められていない気がして」
これ、条件の話を一度もしていないんですよね。年収でも、休日でも、知名度でもない。返事が遅いという事実そのものが、メッセージとして届いてしまったわけです。
転職を考えている人は、たいてい複数社を並行で受けています。そして、自分がどう扱われているかを、選考の速さでしか測れません。会社の中で「あの人は良かったね」と盛り上がっていても、それは候補者には1ミリも見えないんです。見えるのは、返事が来るまでの日数だけ。
だから、遅い会社は「熱がない会社」に見えます。
ここが、いちばんもったいないところです。実際には熱があるのに、伝わっていないだけなんですから。
もうひとつの敵:紹介会社が、黙って優先順位を下げる
人材紹介を使っている会社には、もう一段やっかいな話があります。
選考が遅いと、紹介会社からの推薦そのものが、静かに減っていきます。
こちらも「御社は遅いので推薦を止めます」とは言いません。ただ、良い候補者が出たときに、頭に浮かぶ会社の順番から外れていくだけです。
エージェントが顧客の優先順位をどう決めているか、正直に書きますね。だいたい、この掛け算で見ています。
内定が出る率 × 承諾率 × 選考スピード × 単価
この4つを掛けて、いちばん数字が大きい会社に、いちばん良い候補者を先に出します。営業の商談と同じで、限られた時間をどこに使うかという話なので、当然といえば当然です。
ここで大事なのは、選考スピードが掛け算の中に入っていることです。足し算ではありません。だから、どれだけ単価が高くても、スピードがゼロに近ければ全体がゼロに近づきます。
「うちは手数料を高めに払っているのに、いい人が来ない」という会社は、だいたいここで詰まっています。単価で殴っても、掛け算の他の項が小さければ勝てないんです。
このあたりは、元エージェントが明かす「紹介したくない」瞬間にも書きました。あわせて読んでいただけたら嬉しいです。
守るべき基準を、表にしておきます
自社が今どこにいるか、これで見てください。
| 場面 | 守りたい基準 | 危ないライン | 候補者に届くメッセージ |
|---|---|---|---|
| 書類選考の結果 | 当日〜翌営業日 | 3営業日を超える | 「たくさんの中の1人なんだな」 |
| 面接日程の提示 | 当日〜翌営業日/複数枠を先出し | 「追ってご連絡します」で止まる | 「まだ社内で揉めているんだな」 |
| 面接後の合否 | 翌日〜3営業日 | 1週間を超える | 「自分は本命ではないんだな」 |
| 内定の通知 | 即日〜2営業日 | 3営業日を超える | 「保険として持たれているんだな」 |
| 内定承諾後の連絡 | 週1回は接触 | 入社日まで音信不通 | 「入る前から放置されるのか」 |
念のため書いておくと、これは「速ければ雑でいい」という話ではありません。速いことと、丁寧であることは両立します。むしろ、速い会社ほど連絡の中身も具体的だ、というのが私の実感です。
NG例:いちばん人が離れるのは「検討中です」
ここで一つ、きれいごとを壊させてください。
候補者がいちばん冷めるのは、不合格の連絡ではありません。「検討中です」で止められることです。
会社側からすると、「まだ決めきれていないので、正直に検討中と伝えている」という誠実さのつもりだったりします。私も、そう説明されたことが何度もあります。
でも、受け取る側にはこう届きます。
「あなたは、即決するほどの価値がない人です」
きついですよね。でも、実際そう受け取られています。しかも「検討中」は期限がないので、候補者は待つことも動くこともできない。宙ぶらりんのまま、他社の内定だけが具体的な形で届く。そうなれば、答えは決まります。
もし本当に社内で決めきれていないなら、こう言い換えるだけで、まったく別のものになります。
Before(NG)
「社内で検討中ですので、決まり次第ご連絡します」
After(OK)
「◯日(水)の役員面談で決めます。当日中に、結果と理由をあわせてお伝えします。お待たせしてすみません」
内容は同じ「まだ決まっていない」です。違うのは、期限が入っていることと、こちらから謝っていることだけ。これだけで、候補者は待てるようになります。
やりがちなNGを並べておきますね。
- 「検討中」「追ってご連絡します」で期限を切らずに止める
- 見送りの理由を「総合的に判断した結果」で済ませる
- 面接日程を1枠しか出さず、合わなければまた1枠出す
- 連絡が営業時間内の電話だけ(在職中の人はほぼ取れません)
- 内定承諾から入社日まで、会社側から一度も連絡しない
どれも悪意はゼロです。だからこそ、放っておくと直りません。
遅い会社に共通する、3つの構造
「気をつけます」で直るなら、とっくに直っています。遅い会社には、だいたい構造的な理由があります。
構造①:決める人が、選考の場にいない
一次面接に現場責任者だけが出て、社長は書類だけ見て後から判断する。この形だと、社長が忙しい週は選考そのものが止まります。
売買仲介の会社は、社長が最大のプレイヤーであることが多いですよね。だからこそ、社長の予定に選考が従属している限り、スピードは絶対に上がりません。
構造②:合議で決めようとしている
「全員が納得してから」で進めると、必ず遅くなります。しかも、合議は「反対しにくい人」の意見が通るので、基準もブレます。
決めるのは1人でいい。他の人は意見を出す係、と割り切ったほうが、速さも基準も安定します。
構造③:面接日程を、候補者に合わせていない
「うちは水曜の15時しか空いていません」。在職中の候補者に、これはかなり厳しい条件です。
平日夜、土曜午前、オンライン。この3つのどれかを用意できるかどうかで、会えるかどうかが変わります。会えなければ、速いも遅いもありません。
明日から変える手順
大きな仕組みを作らなくても、ここから始められます。
- 書類選考の担当を1人に決める。 合議をやめる。その人が翌営業日までに出す。
- 面接日程は、最初の連絡で3枠まとめて出す。 うち1枠は平日夜か土曜午前を入れる。
- 面接の合否を、面接直後の5分で決める。 面接官が席を立つ前に、その場で結論を出す運用にする。持ち帰るから遅くなります。
- 見送りにも理由を1行つける。 「今回は◯◯の経験を優先しました」。これがあるだけで、紹介会社の次の推薦の精度が上がります。
- 内定を出したら、入社日まで週1回連絡する。 用がなくてもいいんです。「気にかけている」が伝わればそれで十分です。
3番だけ補足させてください。「その場で決めるなんて雑では」と思われるかもしれません。でも実際は逆で、その場で決められないのは、面接で見るべきことを決めていないからです。見るポイントが決まっていれば、面接が終わった瞬間に答えは出ています。
何を見るかについては、面接ですぐ辞める人を見抜く質問5つにまとめました。見極めの軸が決まると、スピードは勝手に上がります。
選考スピード チェックリスト
そのまま自社に当ててみてください。守れていない項目が、そのまま伸びしろです。
- 書類選考の結果を、当日〜翌営業日に返せている
- 面接日程を、最初の連絡で複数枠まとめて出している
- 平日夜・土曜午前・オンラインのどれかを用意できている
- 面接の合否を、面接当日に決めている
- 見送りの理由を1行でも伝えている
- 「検討中」で止めるときも、必ず期限を切っている
- 内定通知を即日〜2営業日で出せている
- 内定承諾後、入社日まで週1回は接触している
- 選考を止める権限を持つ人が、1人に決まっている
よくある質問
Q1. 現場が忙しくて、翌営業日に返すのが物理的に無理です。
わかります。そこで提案なのですが、全部を速くしようとしないでください。書類選考の結果だけを翌営業日にしてみてください。ここがいちばん人数が多く、いちばん離脱が起きる場所です。面接以降は数が絞られるので、多少余裕が生まれます。1箇所だけ変えるなら、間違いなく書類です。
Q2. 速く決めると、採用の精度が落ちませんか。
落ちません。落ちるとしたら、それは速さのせいではなく、見るポイントが決まっていないからです。逆に、時間をかけたぶん精度が上がる、ということもありません。迷った時間の分だけ、候補者の熱が冷めるだけです。
Q3. すでに「遅い会社」と思われている気がします。取り返せますか。
取り返せます。しかも、けっこう早く。紹介会社も候補者も、直近の体験で判断しているので、次の1人への対応が変われば評価は動きます。もし紹介会社経由なら、担当者に「今月から書類は翌営業日で返します」と宣言してしまうのが速いです。宣言すると、こちらも守らざるを得なくなるので、その意味でもおすすめです。
Q4. 応募自体が少ないので、スピードより母集団では。
そう思われるのは自然です。ただ、順番としては先にスピードを直したほうが得です。母集団を増やす施策はお金と時間がかかりますが、スピードは今日から無料で変えられます。それに、母集団を増やしてから漏れに気づくと、増やした分だけ取りこぼすことになります。求人票の中身から見直したい方は、求人票セルフ添削チェッカーで12項目だけ先に確認してみてください。登録は要りません。
おわりに
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
選考スピードの話は、地味です。求人票を書き直すみたいな達成感もないし、誰かに褒められることもありません。
でも、私が現場で見てきた中で、いちばん安く、いちばん確実に効いた打ち手が、これでした。お金をかけずに、明日から、しかも上位2割に入れる。こんな打ち手は他にないです。
冒頭の「返事をしようとしたら他社で決まっていた」あの人も、たぶん条件で負けたわけではないんですよね。ただ、こちらの熱が届く前に、他社の熱が先に届いてしまっただけで。
次の1人には、間に合わせましょう。まずは書類の返事から、明日ひとつだけ変えてみてください。
内定を出したあとの詰め方については、内定辞退を防ぐクロージングに続きを書いています。採用の全工程をまとめて見たい方は、売買仲介 営業の採用 完全ガイドからどうぞ。
濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。