こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。
「不動産営業を1人採るのに、うちは今いくら使ってますか」
社長にこう聞いて、その場で数字が返ってくる会社は、正直あまり多くありません。「紹介が高いのは分かってる」「媒体にもそれなりに払ってる」——そこまでは即答されるのですが、1人あたりいくらか、という形にはなっていない。
私は前職で、不動産に特化した人材紹介のエージェントをやっていました。あの150万円を「もらう側」にいた人間です。
もらう側にいて思っていたのは、高い安いの前に、比べる土俵が揃っていないということでした。紹介は請求書が来るから金額が見える。自社で採る分は、請求書が来ない部分にコストが隠れているので、実際より安く見える。
今日はその土俵を揃えます。紹介で採る場合と、自社で採る場合の1人あたりの実額を、隠れている分まで含めて並べていきます。
結論:紹介は150万円、自社採用は数十万円。ただし差額は「手数と時間」で払っている
先に答えを言います。
売買仲介の営業を1人採るとき、人材紹介を使えばだいたい150万円です。理論年収の30〜35%という料率で決まるので、提示年収が上がるほど手数料も上がります。
一方、自社の媒体で採る場合、直接出ていくお金は数十万円のレンジに収まることが多いです。金額だけ見れば、たしかに桁が違います。
ただ、ここに請求書の来ないコストが乗ります。私たちが実際に運用している感覚で言うと、スカウトを数千通送って、決まるのが1人。裏を返せば、1人採るために数千通を送り切る手数が要るということです。
つまり、紹介と自社採用は「高い方と安い方」ではありません。同じ1人を、お金で買うか、手数と時間で買うかという違いです。ここを分かったうえで選んでいるかどうかで、採用の意思決定はまるで変わります。
人材紹介の150万円は、どう計算されているのか
まず、見えている方から分解します。
人材紹介の手数料は、ほとんどが成功報酬型です。入社が決まって初めて発生し、決まらなければ0円。料率は理論年収の30〜35%が標準で、これは各社が公開している料金表でも共通しています。
ここで大事なのが「理論年収」の中身です。多くの場合、基本給×12ヶ月+賞与の見込み額で計算され、残業代や通勤手当は含みません。入社時点の提示条件で決まるということです。
早見表にすると、こうなります。
| 理論年収 | 手数料30% | 手数料35% |
|---|---|---|
| 400万円 | 120万円 | 140万円 |
| 500万円 | 150万円 | 175万円 |
| 600万円 | 180万円 | 210万円 |
| 700万円 | 210万円 | 245万円 |
売買仲介の営業は、経験者採用なら500万円前後の提示になることが多い職種です。だから、実際に払う金額が150万円あたりに着地する。冒頭の数字はここから来ています。
参考までに、国税庁「民間給与実態統計調査」(令和6年分・2025年9月公表)によると、給与所得者全体の平均給与は478万円です。売買仲介の経験者に出す提示は、これと同じかやや上の水準になりやすい。つまり手数料が下がりにくい職種でもあります。
ここは誤解のないように書いておきますが、紹介会社がぼったくっているという話ではありません。候補者を探して口説き、面接を調整し、入社まで伴走する。その手間に対する正当な報酬です。もらう側にいたので、これは断言できます。
問題は金額そのものではなく、その150万円を毎回払い続ける前提になっているかどうかです。
自社で採る場合、直接出ていくお金はいくらか
次に、見えにくい方です。自社の媒体で採る場合、費用は大きく3つの型に分かれます。
掲載課金型(求人広告) 掲載期間ごとに定額を払う型です。何人採っても料金は変わりません。例えばエン転職の場合、全国・関東版でもっとも小さいC企画が4週間30万円、露出の大きいSS企画は120万円という料金体系が公開されています(出典:エン転職 公式料金一覧)。決まれば1人あたり単価は下がり、決まらなければそのまま消えます。
クリック課金型(Indeed・求人ボックス等) 表示されて、クリックされた分だけ課金される型です。予算の上限を自分で決められる代わりに、単価は原稿の質と競合状況で動きます。相場としてよく出回っている数字は代理店の公表値で幅が大きいので、ここでは断定しません。自社で回すなら、必ず日予算の上限を先に決めてから始めてください。
無料掲載+スカウト型(engage等) 掲載自体は基本無料で、掲載数・期間の制限もありません。ただ、実際に運用していて分かったのは、無料で置いているだけでは応募はほぼ来ないということです。閲覧はつくのに応募がゼロ、という状態が続きます。無料枠は「応募を集める場所」ではなく、こちらから送るスカウトの着地先として機能します。だから有料プランに上げて、スカウトが打てる状態にして初めて意味を持つ。
なお、engageは2026年6月11日でIndeedへの連携が終了しています。「無料で出せばIndeedにも載る」という前提で書かれた古い情報が残っているので、そこは更新して考えてください。
ちなみに媒体選びそのものは、会社の形(支店数・採用人数・急ぎ具合)で答えが変わります。詳しくは不動産営業の採用媒体の選び分けに書きました。
見落とされる「第3のコスト」=数千通と1ヶ月
さて、ここからが本題です。
媒体費だけを見ると、自社採用は圧勝に見えます。30万円と150万円なら、比べるまでもない。でも、実際に自社で採ろうとすると、この計算に入っていないものが2つあります。
1つ目は、スカウトの手数です。
私たちの運用実感で言うと、数千通送って、決まるのが1人です。返信が来るのはもっと少ない母数で、そこから面談に進み、選考を通り、条件が合って、最後に入社する。この落ち方を全部くぐった結果が「数千通で1人」という数字になります。
一斉送信型の媒体では返信率が1%を切ることもある、と各社の解説記事でも触れられています。数千通という母数は、決して大げさな数字ではありません。
2つ目は、時間です。
これは良い意味の話で、動き出せば1ヶ月あれば決まります。数千通と聞くと途方もなく感じますが、期間としてはそこまで長くない。逆に言えば、その1ヶ月に数千通を送り切る密度が必要だ、ということでもあります。
この2つは請求書が来ません。だから採用単価の計算から抜け落ちる。「媒体費30万で採れたから、うちの採用単価は30万」と思っている会社は、実際には人件費で数十万円分の作業を追加で払っています。
だから正しい採用単価の式は、こうなります。
採用単価 =(媒体費 + 紹介手数料 + 採用にかけた人の時間の人件費)÷ 採用人数
この式で計算し直すと、「安く採れた」と思っていた採用が、実はそこまで安くなかったと分かることがあります。逆に、紹介の150万円が「時間を買った金額」として妥当だった、と見えることもある。どちらに転んでもいいのですが、計算していないまま高い安いを語るのが一番危ないです。
紹介と自社採用、どちらが痛いか(比較表)
金額ではなく、リスクの置き場所で並べると分かりやすいです。
| 人材紹介 | 自社の媒体採用 | |
|---|---|---|
| 費用が発生する時 | 入社が決まった時 | 出稿した時(結果に関係なく) |
| 1人あたりの目安 | 理論年収の30〜35%(売買仲介で約150万円) | 数十万円+作業時間の人件費 |
| 決まらなかった場合 | 0円(金銭的には痛くない) | 掲載費が消える |
| 複数人採ると | 人数分だけ増える | 1人目以降は単価が下がる |
| 必要な手数 | 少ない(候補者は連れてきてもらえる) | 多い(数千通のスカウトと選考対応) |
| スピード | 依頼から早い(ただし優先度次第) | 動き出せば1ヶ月程度 |
この表で一番大事なのは、「複数人採ると」の行です。
紹介は1人採るごとに150万円が積み上がります。2人なら300万円、3人なら450万円。一方、自社の媒体は、1本の求人票と1つのスカウト運用で2人目・3人目を採れるので、採るほど1人あたりが下がっていく。
年に1人だけ採る会社なら、紹介の方が合理的なことは普通にあります。でも年に3人採る予定があるなら、その450万円は自社の採用体制に投資した方が、翌年以降も効きます。
紹介会社を使うにしても、動いてもらえる会社になっていないと意味がありません。そこは人材紹介に150万円払う前にやるべきこととエージェントが紹介したくない会社の特徴に、もらう側の本音として書きました。
単価を下げたいなら、媒体を変える前に見る場所
最後に、実際に単価が動いたケースの話をします。
私たちが自社で運用していて一番効いたのは、媒体を替えることではありませんでした。求人票を直しただけで応募が増えたんです。しかも直したのは、決まって同じ2ヶ所でした。
(1)業務内容のタイトル 「営業職」で止めない。「反響のみの売買仲介営業(飛び込みなし/◯◯支店)」まで書く。一覧画面で開かれる回数がここで変わります。
(2)入社後の活躍イメージ 条件の羅列では応募は来ません。入社してどうなるのか、どう一人前になるのかが浮かぶかどうか。
これはコストで言うと0円の打ち手です。にもかかわらず、同じ媒体費で応募数が変わる=1人あたりの単価がそのまま下がる。媒体を替える前に、まず原稿を疑ってください。
自社の求人票が今どうなっているかは、求人票セルフ添削チェッカーで12項目だけ確認できます。無料で、登録も要りません。書き直すなら、手を入れればそのまま出せる不動産営業の求人票テンプレも置いています。
もう1つ、支店が複数ある会社は掲載の出し方でも単価が変わります。掲載課金型は拠点数だけ費用が増えるので、つい「東京・大阪ほか」とまとめてしまう。すると読む側は自分事にならず、応募が落ちます。求人数に制限のない無料掲載+スカウト型なら、支店ごとに1本ずつ出せる。支店の多い会社ほど、ここの差が単価に効いてきます。
採用コストのチェックリスト
- 直近1年で「採用にかけた総額 ÷ 採用人数」を出しているか
- その総額に、社内の人がかけた時間の人件費が入っているか
- 今期あと何人採るのか(1人なのか3人なのか)を決めているか
- 決まらなかった時に消える金額と、決まった時に払う金額を分けて見ているか
- 無料掲載を「置いているだけ」で終わらせていないか
- 媒体を替える前に、業務内容のタイトルと活躍イメージを直したか
- スカウトを送り切れる体制(誰が・週何通)が決まっているか
よくある質問
Q. 不動産営業の人材紹介手数料は、結局いくらが相場ですか? A. 理論年収の30〜35%が標準です。売買仲介の経験者は500万円前後の提示になることが多いため、実額は150万円前後に着地しやすい職種です。年収を高く提示するほど手数料も上がります。
Q. 自社で採った方が安く済みますか? A. 直接出ていくお金は安くなります。ただし、スカウトを数千通送るような手数が必要になるので、その作業時間を人件費として計算に入れてください。金額だけを比べると、必ず自社採用が有利に見えてしまいます。
Q. 自社の媒体で採る場合、どのくらいの期間がかかりますか? A. きちんと動き出せば1ヶ月あれば決まります。ただし、その1ヶ月にスカウトを送り切れることが前提です。片手間で月に数十通という運用では、同じ結果にはなりません。
Q. 採用単価を今すぐ下げる方法はありますか? A. まず求人票の「業務内容のタイトル」と「入社後の活躍イメージ」を直してください。0円でできて、同じ媒体費のまま応募数が動くので、1人あたりの単価が直接下がります。
Q. 紹介と自社採用、どちらを選ぶべきですか? A. 今期の採用人数で決めるのが分かりやすいです。1人だけなら紹介の方が合理的なことは普通にあります。3人以上採る予定があるなら、その手数料の総額を自社の採用体制に投資した方が、翌年以降も効きます。
濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
もらう側にいたからこそ言えるのですが、150万円という金額そのものは、そこまで不当ではないと思っています。ただ、それが毎回になる会社と、途中で卒業していく会社がある。その差は予算でも知名度でもなく、自社で採る手数を持てたかどうかでした。
そして今日いちばん伝えたかったのは、その手数もタダではない、ということです。数千通と1ヶ月。ここを見ずに「自社採用は安い」と決めると、途中で止まって、結局また紹介に戻ることになります。
その数千通の部分、実務ごと巻き取れます。求人票の作り直しから媒体の運用、スカウトの送信、選考の対応まで、人の手で伴走します(基本料金は月額10万円)。まずは無料相談で、今の1人あたり単価がいくらになっているかだけでも、一緒に計算させてください。