こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。
「中途採用が難しい」。売買仲介の社長や人事の方から、エージェント時代にずっと聞いてきた言葉です。
ただ、中身を聞くと2種類に分かれます。応募がそもそも来ない会社と、応募は来ているのに決まらない会社。今日は後者、「応募は来るのに決まらない」側のお話をしたいです。
例に出すのは、魅力のある大手不動産会社。それでも決定数が伸びず、媒体費をかけて自社で採っているのに、最終的なコストは人材紹介より高くついていました。
応募データを分解すると、選考の途中で人が大きく減っていました。並行して4つの打ち手を積み上げ、決定率は約3倍に。何をどう変えたのか、社名と媒体名は伏せ、数字は丸めてお見せします。
結論:中途採用が難しい原因は「電話で消える」と「惹きつけ不足」です
不動産の中途採用が難しいのは、応募数の問題ではありません。大手不動産会社の事例では、人数で見て一番多く消えたのは最初の電話で、応募の半分近くがそこで止まっていました。そしてこの事例の一番の学びは、人事としての「惹きつけ」でした。
市場が売り手に傾いているのは事実です。ただ、市場はどの会社にも同じようにかかっています。差がつくのは、応募が来てから決まるまでの間です。
中途採用が難しいと言われる理由は、市場だけですか?
市場の数字から見ておきます。パートを含む全職業の有効求人倍率は、令和7年度の平均で1.20倍でした(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」)。計算上、求職者1人に求人が約1.2件ある状態です。
求人のほうが多い市場では、候補者は複数の会社を比べて選べます。選ぶ側に立っているのは、会社だけではありません。
同じ市場の中でも、決まる会社と決まらない会社は分かれます。市場だけを理由にすると、打ち手が出てきません。
不動産営業の中途採用は、ほかの職種より難しいのですか?
営業の仕事は、全体より求人が多い職種です。同じ厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」の職業別の表(令和8年3月・常用(パート含む))では、有効求人倍率が職業計の1.10倍に対し、「営業職業従事者」は2.14倍でした。※月の原数値なので、上の年度平均1.20倍とは集計が違います。
この分類は不動産に限らず、営業職全体の数字です。それでも、営業職の採用は職業計のおよそ2倍の求人倍率の中で候補者を探している、とは言えます。
もう一つ、「いい人が来ない」とこぼす不動産の経営者は、私の体感で10社中8社ほどいました。応募が来ないのか、来ているのに決まっていないのかを分けないまま、「難しい」でひとくくりにしているケースもあります。この見落としは不動産営業に「いい人が来ない」会社が見落とす3つのことで整理しています。
中途採用が難しい理由を、不動産の現場に置き換えると?
「中途採用 難しい」で調べると、上位に出てくるのは理由を6〜8個並べた記事です。中身は正しいんですが、業界を問わない一般論なんですよね。売買仲介の現場で何が起きているかに置き換えると、こうなります。
| 一般に言われる理由 | 不動産営業の現場で起きていること | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 売り手市場 | 全職業の有効求人倍率は1.20倍(令和7年度)、営業職業従事者は2.14倍(令和8年3月・常用)。候補者が会社を比べて選ぶ | この記事 |
| 即戦力の取り合い | 必須条件を積み上げるほど、応募できる人が減る。要件の明確化と緩和が要る | 採用要件の決め方 |
| 採用期間が短い | 選考の基準(書類=当日〜翌営業日/面接=翌日〜3営業日)を守れている会社は約2割 | 選考スピード |
| 選考辞退 | 書類結果が1週間後。候補者は「求められていない」と感じて辞退する | 選考スピード |
| 見極めの難しさ | 面接で見るポイントを4点に絞り、言葉にしておく | すぐ辞める人を見抜く質問 |
| 知名度の差 | 大手と同じ土俵では勝てない。勝てるのは候補者体験 | この記事 |
| 採用手法の多様化 | 応募が多い媒体と、面接につながる媒体が一致しない | 媒体の選び方 |
| 魅力訴求の不足 | 「アットホーム」「やりがい」など裏づけのない言葉で求人票が埋まっている | 求人票のNG文言7つ |
| 内定辞退 | 内定通知が遅れる。目安は即日〜2営業日 | 内定辞退を防ぐクロージング |
※Jingasの整理。左の列は上位記事で挙がる理由をまとめたもの、真ん中の列はその理由が不動産営業の採用でどう表れるかをまとめたものです。倍率の出典は厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年3月分及び令和7年度分)」。
並べてみると、市場と知名度以外の7つは、どれも会社側で手を打てるものばかり。そして、その7つのうち4つは応募の「後ろ」で起きています。
このうち3つは、この記事の後半で深くは扱わないので、ここで一言ずつ答えておきます。
- 即戦力が採れない:必須条件を積み上げる前に、要件を明確にしたうえで緩められる所を緩める
- 見極めが難しい:面接で見るポイントを4点に絞って言語化する(すぐ辞める人を見抜く質問)
- 内定辞退が出る:内定の前に候補者の志向性を社長と共有し、内定通知は即日〜2営業日で出す
応募は来るのに決まらない原因は?大手不動産会社の応募データを分解しました
ここからが本題です。大手不動産会社の数百件の応募を、Jingasで集計しました。
応募のうち、面接までたどり着くのは何割ですか?
| 段階 | 応募100人あたりの目安 |
|---|---|
| 応募 | 100人 |
| 電話がつながった(通電) | 半分をわずかに超える程度 |
| 書類選考に進んだ | 3割弱 |
| 面接を設定できた | 10人に1人に届かない |
| 面接を実施できた | 20人に1人ほど |
※大手不動産会社1社の応募データをJingasが集計。社名・媒体名は伏せ、数字は丸めています。
表のとおり、面接まで進めるのは20人に1人ほどです。正直に言うと、「応募数」だけ見て一喜一憂していると、この落ち方は見えません、、
見るべきは、その応募が電話に出てもらえるところまで、書類を見てもらえるところまで進んでいるかです。
人数で見て、一番多く消えるのはどこですか?
最初の電話です。応募の半分近くが、「電話がつながらない」の一点で止まっていました。
入口の数字がどれだけ立派でも、最初の接触で半分が消えているなら、そこを塞がない限り何も変わりません。
応募が来たら、とにかくすぐ連絡する。つながらなければ、どこの誰か・何の電話か・次にどうなるかの3点をメッセージに残す。この初動の詳しいやり方は応募が来たあとの24時間が勝負ですにまとめました。
媒体によって、応募の「質」は違いますか?
違います。この会社が使っていた大手転職サイトはA・B・Cの3つ。同じ「応募が来る媒体」として横一列に並べていましたが、一件ずつの行方を追うと、まるで別物でした。
| 媒体 | 応募数 | 電話のつながりやすさ | 面接まで進んだ割合 |
|---|---|---|---|
| 媒体A | 一番多い | 3つの中で中間 | 一番高い |
| 媒体B | 2番目 | 一番高い | 一番低い |
| 媒体C | 一番少ない | 一番低い | 3つの中で中間 |
※同じ大手不動産会社の応募データをJingasが集計。媒体名は伏せ、数字は順位に置き換えています。
引っかかるのは媒体Bです。電話は一番つながるのに、面接まで進んだ割合は一番低い。媒体Aと比べると、面接まで進んだ割合に大きな開きがありました。
なぜそうなったのか、理由はこのデータからは分かりません。見え方だけ婚活サイトに喩えるなら、返信が早い相手ほどデートまで進むとは限らない、という形に似ています。だから媒体ごとに分けて見るしかありません。
「応募が来る媒体」と「面接につながる媒体」は、一致するとは限りません。媒体ごとに応募数と面接到達率を分けて見ないと、面接につながらない媒体にお金を払い続けることになります。
決まらない本当の原因は?「惹きつけ」が決定率を分けていました
応募を集めて、機械的に接触するだけでは決まりません。
なぜ、接触するだけでは決まらないのですか?
単に接触しただけの相手は決まらず、人事としての惹きつけが決定率を決めていました。
候補者は複数の会社を比べられる立場です。連絡が事務的な会社と、自分に向き合ってくれる会社が並んだら、どちらを選ぶかは見えていますよね。
面接では、何を変えればいいですか?
面接を「見極める場」だとしか思っていない会社を、エージェント時代に見てきました。
でも、面接は同時に「口説く場」でもあります。お見合いの喩えも含めた考え方は面接は「口説く」場に書いたので、ここでは最初の一言だけ変えてみます。
- Before(NG):「では、志望動機から聞かせてください」
- After(OK):「今日はまず、うちの仕事の良いところも大変なところも先にお話しさせてください。そのうえで、今回の転職で何を一番大事にして決めたいかを聞かせてください」
Afterの後半は、転職で何を大事にして決めるかという「決断の軸」を聞く質問です。家族や生活環境など、仕事に関係のないことを聞く必要はありません。
大手不動産会社は何を変えたのか?決定率を約3倍にした4つの打ち手
今回の相手は、魅力のある大手不動産会社です。それでも決定率は伸び悩んでいました。
やったことは4つです。手応えの大きかった順に並べます。
打ち手①:連絡の即レスにする
応募後の連絡から、返信を早くしました。
事例とは別に、目安として私がおすすめしているのは、書類選考の結果を当日〜翌営業日、面接の結果を翌日〜3営業日、内定は即日〜2営業日です。理由と実例は不動産営業の選考、遅いだけで辞退されますに書きました。
打ち手②:人事として伴走し、候補者の意向を上げる
先に挙げた「惹きつけ」は、この打ち手のことです。人事として伴走し、候補者の意向を上げる。「見極める」だけの動きを、「口説く」動きに変えました。
ここからは事例とは別の、私の考え方です。面接は「相手を惚れさせるために見極める」つもりで臨む。選考結果の連絡は「総合的に判断しました」で済ませない。どちらも候補者体験の一部です。
打ち手③:求人を見直す
求人は、求職者が知りたい内容を、シンプルに、過不足なく、インパクトをつけて伝える形に直しました。
事例の中身として出せるのは、ここまでです。
一般論として言えば、応募が来ない求人票は「アットホームな職場です」「やりがいのある仕事です」のような、裏づけのない言葉で埋まっています。応募が集まらない時の求人票の直し方は、このあと「母集団が集まらない時は?」で紹介します。
自社の求人票が今どのくらい伝わる形になっているかは、12項目でその場で確かめられる求人票セルフ添削チェッカーで測れます。手を入れればそのまま出せる形がほしい方は求人票テンプレートを、作り方を順番に知りたい方は応募が来る求人票の作り方 完全ガイドをどうぞ。
打ち手④:スカウトを見直す
最後がスカウトの見直しです。この事例で何をどう変えたかの中身は、ここでは伏せます。
スカウトそのものについて一般に言えることは、別の記事にまとめました。数千通送って1人決まる世界なので、返信が来たあとの即レスと口説きが弱ければ、送った数は0で終わります。詳しくは不動産営業のスカウトは「数千通で1人」をどうぞ。
この4つを積み上げて、決定率は約3倍になりました。入社した人数はここでは伏せますが、決まる確率はここまで動きました。
中小の不動産会社でも同じ打ち手で戦えますか?悩み別の対策
戦えます。大手と同じ土俵では勝てなくても、勝てる方法が一つあります。候補者体験です。
大手でも、惹きつけが決定率を分けていました。知名度と条件では大手に並べない会社は、候補者体験で上回るしかありません。そして候補者体験は、規模に関係なく今日から変えられます。
候補者体験は、①選考スピード ②連絡の質 ③面接官の態度 ④透明性 ⑤入社前フォロー、の5つで考えると整理しやすいです。
中途採用がうまくいかない時、何から手をつけるべきですか?
事例の4つの打ち手とは別に、手をつけやすい順に並べると、こうなります。
- 応募への初回連絡と選考結果の連絡を、目安の日数に収める
- 面接の最初の数分を、会社の魅力と仕事のリアルを伝える時間にする
- 求人票のタイトルと、裏づけのない言葉を直す
- 媒体ごとに、応募数と面接到達率を分けて見る
1と2はお金がかかりません。媒体を替える前に、ここから始めてください。
母集団が集まらない時は、どうすればいいですか?
この記事は「応募は来るのに決まらない」側の話ですが、応募そのものが来ない時のことも少しだけ。
Jingasで運用してきた求人で、媒体を替えず求人票を直しただけで応募が増えたことがあります。直したのは決まって2か所でした。
1つ目は仕事のタイトルです。
- Before(NG):「営業職」
- After(OK):「反響のみの売買仲介営業(飛び込みなし)」
何の仕事かがタイトルで分かるだけで、一覧で開かれる回数が変わります。
2つ目は活躍イメージです。入社後に自分がどうなるかが浮かぶかどうか。条件を並べただけの求人票では、応募は来ません。
応募が来ない原因の見落としは不動産営業に「いい人が来ない」会社が見落とす3つのことでも整理しています。
早期離職やミスマッチは、どう防げばいいですか?
ミスマッチを減らす手は、選考の中にあります。
一つは透明性です。「成長が速い分、仕組みがまだ整っていない部分があります」のように、整っていない所も正直に伝える。もう一つは、内定の前に候補者の志向性を社長と共有しておくことです。
連絡の中身も見直してください。選考結果を「総合的に判断しました」の一言で済ませない。内定から入社までは、週1回は連絡を入れる。入社前のフォローも、候補者体験の一部です。
入社後に辞める流れについては入社3ヶ月で辞める不動産営業で詳しく書いています。
採用担当の手が足りない時は、どうすればいいですか?
社長にとっての本当の壁は、手間そのものより「成果が出るか分からないまま打ち続けられるか」だと思っています。
手間の大きさは、スカウトで見ると分かりやすいです。スカウトは数千通送って決定1人。決まるまでの期間は1ヶ月ほどなので、1ヶ月で数千通を送り切る密度が要ります。週50通のペースでは、同じ結果にはなりません。
それでも手が足りないなら、まず守るのは後ろの工程です。前工程の数だけ増やしても、返信への即レス・面接で口説く・選考スピード・内定後フォローが弱ければ、結果は0で終わります。
人材紹介と自社採用、結局どちらが安いのですか?
売買仲介の人材紹介は、1人あたり約150万円が目安です。一方、今回の大手不動産会社は、媒体で自社採用しているのに、決まらないせいで最終的なコストが人材紹介より高くついていました。
自社採用は、安いわけではありません。お金を手数と時間に置き換えているだけです。後ろの工程が弱いままだと、置き換えたはずの手数が決定につながらず、結局高くつきます。実額の比べ方は不動産営業の採用は1人いくらかかるのかにまとめました。
中途採用がうまくいかない時のチェックリスト
- 応募数だけでなく、電話がつながった人数を分けて数えているか
- 書類選考・面接設定・面接実施の各段階で、何人残っているかを見ているか
- 媒体ごとに「応募数」と「面接到達率」を別々に比べているか
- 応募への初回連絡が、すぐ出せる体制になっているか
- つながらなかった時に、メッセージを残しているか
- 書類結果は当日〜翌営業日、面接結果は翌日〜3営業日で返せているか
- 面接を「見極め」だけでなく「惹きつけ」の場にできているか
- 求人票のタイトルで、何の仕事か一行で分かるか
- スカウトの返信に、すぐ返せる人が決まっているか
よくある質問
Q. 中途採用が難しい一番の理由は何ですか? A. 応募の後で取りこぼしていることです。今回の大手不動産会社の事例では、応募の半分近くが最初の電話で消え、決定率を分けたのは惹きつけでした。市場の数字も見ておくと、全職業の有効求人倍率は令和7年度平均で1.20倍(厚生労働省「一般職業紹介状況」)で、計算上、求職者1人に求人が約1.2件ある状態です。
Q. 応募が多い媒体を、そのまま使い続けていいですか? A. 応募数だけで判断すると誤ります。今回の事例では、電話が一番つながる媒体が、面接到達率では一番低い結果でした。「応募数」と「面接まで進んだ割合」を分けて見て、初めて面接につながる媒体かどうかが分かります。
Q. 大手でも、こんなに決まらないことがあるんですか? A. あります。今回の事例も、魅力のある大手不動産会社でした。魅力がある会社でも、採用の打ち手が伴っていなければ決定率は伸びません。知名度で大手に並べない会社は、同じ土俵ではなく候補者体験で勝負することになります。
Q. 内定辞退を防ぐには、どうすればいいですか? A. 内定の前に、候補者の志向性を社長と共有しておくことです。そのうえで、内定通知は即日〜2営業日で出します。詳しくは不動産の内定辞退を防ぐクロージングで書いています。
Q. 応募の電話がつながらない時は、どうすればいいですか? A. とにかくすぐかけ、つながらなければメッセージを残します。残す中身は、どこの誰か・何の電話か・次にどうなるかの3点です。「折り返してください」と相手に宿題を出すより、「またこの時間にかけます」と伝えるほうが受け取ってもらいやすくなります。
Q. 中途採用の振り返りでは、どの数字を見ればいいですか? A. 応募数に加えて、通電・書類選考・面接設定・面接実施の各段階で何人残っているかを見てください。どこで一番人が減っているかが分かれば、手をつける場所が決まります。媒体ごとにも同じ数字を並べると、面接につながる媒体とつながらない媒体が見えてきます。
濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
応募を集めることにも、接触することにも、もちろん意味はあります。
でも今日いちばん言いたかったのは、そこはゴールじゃない、という話です。最後に決定率を決めるのは、一人ひとりの候補者にどれだけ向き合えたか。「中途採用が難しい」の答えの多くは、実はこの一点に隠れていると思っています。
中小の会社でも、同じ打ち手は今日から始められます。
求人票から手をつけたい方には、手を入れればそのまま出せる求人票テンプレートもどうぞ。
自社の応募が、どこで止まっているのか。まだ分解できていない方もいると思います、、そこも含めて、求人票の見直しから媒体運用・スカウト・選考支援まで、採用の実務ごと人の手で伴走します(基本料金は月額10万円)。まずは無料相談で、「今の応募がどこで止まっているか」だけでも一緒に見させてください。