こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。
今日は、賃貸仲介の繁忙期と採用の時期の話をしたいです。
7月ごろから、賃貸仲介の会社の社長から「繁忙期までに、あと1人ほしい」という相談が増えてきます。Jingasに賃貸仲介の会社から採用の相談が来るのも、7〜10月が多いです。繁忙期が見えてきて、慌てて動き出す。そういう相談が多いです。
気持ちはよく分かります。1〜3月に人が足りないのは、毎年のことですもんね、、。
ただ、この時期に探し始めると、1つずれが起きます。
先に結論:時期はずれている。でも、秋から採っても間に合わせ方はある
先に答えを言うと、こうです。
- 会社が探し始めるのは7〜10月。でも賃貸仲介の求職者が動くのは4〜5月が多い。探す時期と動く時期がずれています
- それでも、秋に採るのは手遅れではありません。繁忙期の直前に入社した人と、9〜10月に入社した人とで、定着や立ち上がりに目立った違いは私の見てきた範囲ではありませんでした
- 差がつくのは受け入れです。繁忙期に入社してすぐ辞めた人がいた会社は、共通して「完全放置」でした。逆に教える体制がある会社では、繁忙期はむしろ経験を積みやすく、立ち上がりが早くなります
順番にいきます。
引っ越しは3月に集中しています
まず、繁忙期の山がどれくらいなのかを数字で見ておきます。
総務省「住民基本台帳人口移動報告」から、2025年の市区町村をまたいだ移動者数(転入の届出をした人の数)を並べました。
| 月 | 移動者数 |
|---|---|
| 1月 | 327,312人 |
| 2月 | 357,056人 |
| 3月 | 905,179人 |
| 4月 | 683,859人 |
| 年間 | 5,190,548人 |
(出典:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」2025年1〜4月の各月の概況、2025年結果)
年間を12で割ると、1か月あたり約43万人です。3月はその約2.1倍。3月と4月の2か月だけで、1年の移動の約3割が起きています。
これは転入の届出の数なので、部屋探しそのものはその前に来ます。1〜3月に店が回らなくなるのは、この山の手前にいるからです。
山の高さがこれだけ違うと、1〜3月に人を増やしたいと考えるのは当然です。問題は、そのための採用をいつ始めるか。
会社が探す時期と、求職者が動く時期がずれている
エージェント時代の経験則でいうと、賃貸仲介の求職者が転職に動き出すのは4〜5月が多かったです。繁忙期を走り切って、区切りがついたころですね。
一方で、会社が「繁忙期までに」と探し始めるのは7〜10月。
並べるとこうなります。
| 時期 | 会社 | 求職者 |
|---|---|---|
| 1〜3月 | 繁忙期で採用どころではない | 繁忙期の真っ最中 |
| 4〜5月 | 繁忙期が終わってひと息 | 動き出す人が多い |
| 7〜10月 | 「繁忙期までに」と探し始める | ― |
動き出す人が多い4〜5月に、会社の側はまだ募集を出していないことが多い。そして会社が探し始める秋には、春に動き出した人は、もう次の職場を決めていることも多いはずです。
婚活でいえば、相手がいちばんお見合いに出てきている時期に、こちらはまだプロフィールも作っていない状態です。
だから、来年に向けた答えははっきりしています。繁忙期のための採用は、繁忙期が終わった直後の4〜5月に始めてください。繁忙期に入る前の12〜1月のうちに求人票を見直しておき、4月には出す。夏から秋に育てて、次の繁忙期を迎える。この順番です。
じゃあ、10月の今から動くのは手遅れか
ここまで読んで、「じゃあ今年はもう無理か」と思った社長もいると思います。
そうでもありません。
私が見てきた中では、繁忙期の直前(12〜1月)に入社した人と、9〜10月に入社した人とで、定着や立ち上がりに目立った違いはありませんでした。入社した時期そのものは、あまり関係がないんです。
関係があったのは、受け入れのほうでした。
繁忙期に入れて辞めるのは「完全放置」の会社
繁忙期に入社して、すぐ辞めてしまった人がいた会社。共通していたのは、完全放置です。
繁忙期は、店の全員が自分のお客さんで手一杯です。新人に誰かを付けるつもりでいても、来店が重なれば先輩はそっちに行く。新人は、誰に何を聞けばいいのか分からないまま、1日が終わってしまう。
これで残ってほしいと言うのは、さすがに無理がありますよね、、。
ただ、同じ繁忙期でも、教える体制がしっかりしている会社では逆のことが起きていました。繁忙期は、経験を積みやすい時期でもあるんです。
暇な時期なら1週間に数組しか見られない接客や内見を、繁忙期は1日で何組も見られる。お客さんの数が多い分、同じ説明を何度も聞き、同じ手続きを何度も横で見ることになります。教える人が隣にいれば、その量がそのまま新人の経験になります。
放置すれば辞める。付いていれば早く育つ。繁忙期の新人は、入社した時期ではなく、隣に誰がいるかで決まります。
繁忙期に新人を入れる前に、決めておく4つ
秋から冬に採るなら、入社日の前にこの4つを決めておいてください。どれも、繁忙期に入ってから考えたのでは間に合わないものです。
1. 隣に付く先輩を1人決める。繁忙期の間も外さない
「みんなで教える」は、繁忙期には「誰も教えない」になります。名前を1人決めて、その人の来店や内見に新人を同行させる。その先輩の数字が一時的に落ちる分をどう見るかも、社長が先に決めておきます。
2. 任せる仕事を、段階で決めておく
たとえば、物件の空き状況の確認の電話、内見の同行、案内を1人で、申込みの手続き、というように、何をどの順番で任せるかを紙1枚にしておきます。繁忙期は「今日は何をすればいいですか」と聞ける相手がいないので、紙が代わりになります。
3. 1日の終わりに、短くていいので振り返る時間を取る
その日に見た接客で分からなかったことを、先輩に聞ける時間です。繁忙期の閉店後は全員疲れているので、10分か15分でかまいません。ゼロにしないことが大事です。
4. 宅建がない新人なら、重要事項の説明をどうするかを決める
重要事項の説明は宅建士にしかできません(宅建業法第35条)。宅建がない新人が付いたお客さんの重説を、誰がいつ行うのかを決めておかないと、繁忙期の申込みが重なった日に詰まります。宅建を持っていない人を採ったあとの段取りは、宅建なしで採った人の取得支援の記事にまとめています(売買仲介向けに書いていますが、試験や講習の仕組みは賃貸仲介でも同じです)。
入社して最初の1か月の組み立て方は、初月オンボーディングの記事でも書いています。繁忙期はこれを、もっと短い周期で回すイメージです。
求人票には、繁忙期を隠さず書く
秋に募集を出すなら、求人票で繁忙期のことを書いておいてください。
賃貸仲介に繁忙期があることは、経験者なら誰でも知っています。未経験の人でも、少し調べればすぐ分かります。書いていない求人票は、隠しているように見えるか、入社してから「聞いていない」になるかのどちらかです。
候補者が知りたいのは、その間どう働くのか、入ったばかりの自分がどう扱われるのかです。
Before(NG)
- 繁忙期あり
- 未経験歓迎・研修制度あり
After(OK)
- 時間外労働あり(固定残業代を払う場合は、その時間数と金額、超えた分は別途支給と明記)。1〜3月は繁忙期で、時間外労働が増えます(昨年の1〜3月の実績:月平均◯時間)
- 休日は規程どおり月◯日。繁忙期も日数は変わりません。休む日の希望は、前月の◯日までに出していただきます
- 秋から冬に入社された方には、最初の繁忙期の間、隣に付く先輩社員を1人決めて、来店・内見に同行していただきます
- 入社後に任せる仕事の順番(空室確認の電話→内見の同行→1人でのご案内→申込み手続き)を、入社日にお渡しします
※◯の部分は、自社の実際の数字と決まりに置き換えてください。やっていないことは書かないでください。繁忙期に入れば、全部その場で確かめられます。
成長が速い分、きつい時期もある。そこを先に正直に言っておく会社のほうが、候補者は安心します。きれいなことだけ書いた求人票で入ってきた人ほど、繁忙期の初日に「話が違う」と感じます。
未経験の人に向けた求人票の書き方は、未経験歓迎の求人票の書き方も参考にしてください。
NG例:繁忙期の採用で、会社がやりがちな5つ
- 繁忙期が見えてから探し始める。求職者が多く動く4〜5月を、毎年見送っています
- 「繁忙期だから」と入社日を年明けまで延ばす。入社まで間が空くと、その間に他社に決める人も出ます(内定から入社までの空白の危うさは入社3ヶ月で辞める構造の記事に書きました)
- 付く先輩を決めずに「みんなで見る」。繁忙期には、誰も見ない状態になります
- 求人票に繁忙期を書かない。入社してから知った人は、きつさより先に「隠されていた」と感じます
- 繁忙期を「人手」としてだけ見る。新人に任せる仕事の順番がないと、何もできないまま1日が終わります
チェックリスト:繁忙期までに人を入れるなら
まず上の2つを決めてください。ここが決まらないなら、今年は採用を急がず、来年の4〜5月に向けて準備するほうが確実です。
- 新人の隣に付く先輩の名前を、1人決めているか
- その先輩の数字が繁忙期に落ちる分を、どう評価するか決めているか
- 入社後に任せる仕事の順番を、紙1枚にしているか
- 1日の終わりに振り返る時間を、繁忙期の間も取ると決めているか
- 宅建がない新人のお客さんの重要事項の説明を、誰が行うか決めているか
- 求人票に、時間外労働の規程(固定残業代の有無など)を書き、繁忙期の実績を添えているか
- 繁忙期の休日の数と、休む日の決め方を書いているか
- 内定から入社日までの間に、連絡を取る予定を入れているか
- 来年の4〜5月に募集を出すための求人票の見直しを、繁忙期に入る前(12〜1月)の予定に入れているか
よくある質問
Q. 繁忙期の直前に入社した人は、すぐ辞めやすいですか。
入社した時期そのもので、定着に大きな差が出るとは私は見ていません。エージェントとして見てきた中では、12〜1月に入社した人と9〜10月に入社した人とで、目立った違いはありませんでした。辞めた人がいた会社に共通していたのは、繁忙期の間の完全放置です。隣に付く人と、任せる仕事の順番を決めておけば、繁忙期はむしろ経験を積みやすい時期になります。
Q. 賃貸仲介の求職者が多く動くのは、何月ごろですか。
エージェント時代の経験則では、繁忙期を終えた4〜5月が多かったです。会社が「繁忙期までに」と探し始める7〜10月とはずれがあるので、繁忙期のための採用は、4〜5月から始めるのがおすすめです。
Q. 繁忙期は教える時間がありません。それでも採るべきですか。
教える人を決められないなら、繁忙期の直前に入れるのはおすすめしません。放置された新人は辞めやすいからです。1人でも隣に付けられるなら、繁忙期は1日に何組もの接客や内見を見られる時期なので、むしろ早く育ちます。付けられるかどうかで、今年採るか、来年の春に回すかを決めてください。
Q. 宅建を持っていない新人は、繁忙期に何ができますか。
重要事項の説明と、その書面への記名は宅建士にしかできません(宅建業法第35条)。それ以外の、物件の空き状況の確認、内見の同行、ご案内などは宅建がなくてもできます。宅建がない新人が付いたお客さんの重要事項の説明を、誰がいつ行うかは、入社前に決めておいてください。
おわりに
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
繁忙期に人が足りないのは、毎年同じです。だから慌てるのも毎年同じになりやすい。
来年からは、繁忙期が終わった4〜5月に募集を出してください。そして今年、秋から冬に採るなら、入社日の前に「隣に付く人」と「任せる仕事の順番」を決めてください。
繁忙期は、放っておけば新人が辞める時期で、付いていれば新人が一番育つ時期です。どちらになるかは、入社した日ではなく、その前の準備で決まります。
今日はまず、もし今週1人入社したら、隣に付けられる先輩が誰か、名前を1人書き出してみてください。名前が出てこなければ、そこから決めてください。
濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。