こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。
今日は、宅建を持っていない営業を採ったあとの話をしたいです。
売買仲介の採用で「宅建必須」を外す会社は、ここ数年でかなり増えました。母集団が狭くなりすぎるので、それ自体は正しい判断だと思っています(考え方は不動産営業の採用要件の決め方に書きました)。
ただ、外したあとが空白になっている会社が多いんですよね。
求人票には「入社後の資格取得を支援します」。面接では「宅建はおいおい取ってもらえれば」。入社したら、テキスト代は出す。
じゃあ、その人が入社した月から、最初に受けられる試験まで何か月あるか。社長、すぐ答えられますか。
先に結論:宅建取得支援の本体は、日程と、在籍者だけが使える講習と、合格したあとの段取りです
テキスト代を出しているかどうかは、ほとんど関係ありません。宅建試験の仕組みを並べてみると、会社にしか決められないことが3つ出てきます。
- 日程:入社した月から、最初の試験日までを逆算して本人に渡しているか
- 登録講習:試験の5問が免除される講習を、会社として受けさせているか(在籍者しか受けられません)
- 合格後:登録と宅建士証の交付まで、誰がいつ段取りするかを決めているか
そしてもう一つ、これは本人のためだけの話ではありません。宅建業法には、事務所ごとに置かなければならない宅建士の数が決まっています。宅建なしで採り続ける会社ほど、この枠が採用計画の上限になっていきます。
順番にいきます。
「5人に1人」は、会社の側の事情です
宅地建物取引業法第31条の3は、宅建業者に対して、事務所ごとに「成年者である専任の宅地建物取引士」を置くことを求めています。数は施行規則第15条の5の3で決まっていて、事務所で「宅地建物取引業者の業務に従事する者」の数に対して、5分の1以上です。
計算すると、業務に従事する人が5人までなら専任の宅建士は1人、6人になった時点で2人必要です。しかも、この数を割り込んだら2週間以内に適合させる措置を執らなければならない、と同条第3項に書かれています。
ここで一つ注意があります。分母は営業の人数だけではありません。条文の言葉は「宅地建物取引業者の業務に従事する者」で、取引の担当者に限っていません。どこまでを数えるかの細目は、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」で確認してください。
採用の話として読み替えると、こうなります。
営業を1人増やすたびに、宅建士の枠を確認しないといけない。宅建なしで採った人が何年も取れないままだと、次に営業を増やしたいとき、宅建を持っている人しか採れなくなる。「宅建なし可」で母集団を広げたはずが、2年後に自分で母集団を狭めている。
もう一つ、宅建士でなければできない仕事も確認しておきます。重要事項の説明(第35条)と、その書面への記名、そして契約が成立したときに交付する書面(第37条)への記名です。反響対応や追客、内見の同行は、宅建がなくてもできます。
つまり、宅建なしで採ること自体は何も問題ない。問題は、取らせる設計がないまま採り続けることです。
試験は年1回。申込みは夏に締め切られます
ここが、いちばん見落とされているところです。宅建試験は年に1回しかありません。
令和8年度の日程は、一般財団法人不動産適正取引推進機構の公表でこうなっています。
| 項目 | 令和8年度 |
|---|---|
| 申込期間の締切 | 郵送 7月15日(水)/インターネット 7月31日(金) |
| 試験日時 | 10月18日(日)13時〜15時(登録講習修了者は13時10分〜15時) |
| 合格発表 | 11月25日(水) |
| 受験手数料 | 8,200円 |
(出典:一般財団法人不動産適正取引推進機構「宅建試験」「試験の概要」)
日程は毎年少しずつ動きますが、型は変わりません。夏に申込みが締め切られ、秋に試験があり、冬に発表がある。
これを入社月に当てると、同じ「入社後に取得」でも、最初の試験までの期間がまったく違ってきます。令和8年度の日程で数えるとこうです。
| 入社した月 | 最初に受けられる試験 | 入社から試験までの目安 |
|---|---|---|
| 1月 | その年の10月 | 約9か月 |
| 4月 | その年の10月 | 約6か月 |
| 7月(申込締切前) | その年の10月 | 約3か月 |
| 8月 | 翌年の10月 | 約14か月 |
| 10月 | 翌年の10月 | 約12か月 |
※本人が入社前に自分で申し込んでいる場合を除きます。
8月に入社した人は、どれだけやる気があっても、その年の試験には申し込めません。最初の試験は1年以上先です。
逆に7月に入社した人は、入社してすぐ申込みをしないと1年待つことになる。しかも試験まで3か月しかない。入社月を見ずに「1年目で取ってね」と言っている会社は、人によって無理な約束をさせています。
もう一つ、試験は日曜の午後です。売買仲介にとって、日曜の午後はいちばん予定が入る時間帯ですよね。試験日に案内や反響の当番を入れないことを、会社として先に決めておいてください。本人からは言い出しにくいです。
5人に4人が落ちる試験だと、先に共有してください
令和7年度の宅建試験は、受験者245,462名に対して合格者45,821名。合格率は18.7%でした。合格基準点は50問中33点です(出典:一般財団法人不動産適正取引推進機構「試験実施概況(令和7年度以前10年間)」)。
過去10年の10月試験で見ても、合格率は15%台から18%台で推移しています。
5人に1人の宅建士を置けという法律があって、5人に4人が落ちる試験がある。売買仲介の会社は、この2つの間で人を採っているということです。
だから、支援の制度を作るときに先に決めておくべきことがあります。1回目で受かる前提で計画を立てないことです。「この人はいつ宅建士の枠に入るか」を採用計画の上で見込むなら、1回目の合格ではなく、2回目か3回目を基準に置いておくほうが現実的です。
登録講習は、在籍している人しか受けられません
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
宅建試験には「登録講習」という制度があります。国土交通大臣の登録を受けた機関が行う講習を修了し、修了試験に合格すると、その日から3年以内に行われる試験で、50問のうち5問が免除されます。
令和7年度の合格基準点は、一般の受験者が50問中33点、登録講習修了者が45問中28点でした。
そして、この講習には受講の条件があります。不動産適正取引推進機構の案内には、宅地建物取引業に従事している方(従業者証明書をお持ちの方)のみ受講できる、一般の方は受講できないと書かれています。
従業者証明書は、宅建業者が従業者に携帯させなければならない証明書です(宅建業法第48条)。つまり、これを出せるのは会社だけです。
登録講習は、入社してからでないと受けられない。受けさせられるのは、雇っている会社だけ。
「資格取得支援」の中身として、これ以上わかりやすいものはないと思っています。テキスト代は本人でも払えます。でも登録講習の受講資格は、本人がどれだけお金を出しても手に入りません。
ただし、段取りには注意が要ります。
- 受講の申込みから修了まで、2か月以上かかります(同機構の案内)
- 講習を受けている途中では、登録講習修了者として試験を申し込めません。修了試験に合格してから申し込みます
- 試験の申込みは夏に締め切られます
つまり、その年の試験で5問免除を使いたいなら、講習の申込みは春のうちに済ませておく必要があります。講習の日程は機関ごとに違うので、入社が決まった時点で確認してください。夏以降に入社した人は、翌年の試験に向けて、年が明けたら講習を組む、という逆算になります。
なお、5問免除で合格が約束されるわけではありません。あくまで5問分です。ただ、合格基準点の1点差で結果が分かれる試験なので、会社が用意できるものとしては十分に意味があります。
合格した翌日から宅建士になれるわけではありません
もう一つ、見落とされやすいところです。試験に合格しても、それだけでは宅建士として重要事項の説明はできません。
流れはこうです。
- 試験に合格する
- 都道府県知事の登録を受ける:宅建業法第18条で、合格者のうち、実務経験2年以上(施行規則第13条の15)の人か、国土交通大臣がそれと同等以上の能力があると認めた人が登録を受けられます。後者の代表が「登録実務講習」の修了者です(施行規則第13条の16)
- 宅地建物取引士証の交付を受ける:交付の申請前6か月以内に行われる法定講習を受ける必要があります。ただし、試験に合格した日から1年以内に交付を受ける人は、この講習が不要です(宅建業法第22条の2第2項)
未経験で入社した人が1年目で合格した場合、実務経験はまだ2年に届いていません。そのままだと登録を受けられないので、登録実務講習を受けるかどうかを、会社と本人で決める必要があります。
そして、試験に合格した日から1年以内に宅建士証の交付まで済ませれば、法定講習を受けずに済む。合格してから放っておくと、手続きが1つ増えるということです。
5人に1人の枠に数えられるのは、宅建士証を持った「宅地建物取引士」です。合格の報告を聞いて安心している間は、会社の枠は1人も増えていません。
求人票には「支援します」ではなく、日付を書いてください
求人票に書くなら、こうです。
Before(NG)
- 宅建なしOK
- 入社後の資格取得を支援します
- 宅建手当あり
After(OK)
- 宅建をお持ちでない方も歓迎します。入社後に受けていただく最初の試験は、4月入社の方なら同じ年の10月です(入社月ごとの目安は面接でお渡しします)
- 入社後、試験の5問が免除される登録講習を、会社負担で受講していただけます(宅建業に従事している方しか受けられない講習です)
- 試験日と、その前の1か月の日曜は、案内・反響の当番に入れません
- 不合格だった場合も、翌年度の受験料は同じ条件で会社が負担します(登録講習の5問免除は、修了試験の合格から3年以内の試験に使えます)
- 合格後、実務経験が2年に届いていない方の登録実務講習と、宅建士証の交付手続きも、会社が段取りします
- 宅建手当 年36万円(月3万円)
※金額・期間は自社の実際の制度に合わせて書き換えてください。やっていないことは書かないでください。入社後に必ず分かります。
Beforeを読んだ候補者に残るのは、「何か手伝ってくれるらしい」という印象だけです。Afterを読むと、自分が何月に試験を受けて、いつごろ重要事項の説明に立てるのかを、自分で数えられます。
手当を月額でなく年額で見せる理由は、不動産営業の年収の見せ方に書いたとおりです。月3万円と年36万円は同じお金ですが、読む側の受け取り方がまるで違います。
面接でも同じです。エージェント時代の経験則でいうと、未経験の方が不安に思うことの上位に、ほぼ必ず宅建が入ってきます。そこで「おいおいでいいですよ」と答えると、安心させたつもりで、実は何も伝わっていません。
お見合いで「結婚はそのうち考えましょう」と言われても、相手は安心しないですよね、、。安心するのは、具体的な日取りの話が出てきたときです。
面接の場で入社月を聞いて、「その月に入社されたら、最初の試験はここです。登録講習はこの時期に申し込みます」と、紙1枚で渡してください。育成の流れ(最初の1か月は先輩に同行、半年で独り立ち、など)を見せている会社なら、その横に宅建の日程を1行足すだけです。
宅建の項目も含めて、求人票全体を12項目で見直したいときは、不動産営業の求人票セルフ添削チェッカーが使えます(登録不要・3分ほどです)。
NG例:入社後の宅建で、会社がやりがちな5つ
どれも悪気はないのに、本人の受験を1年単位で遅らせているものです。
- 入社月を見ずに「1年目で取って」と言う。8月入社の人は、その年の試験に申し込めません。本人は最初から守れない約束を背負います
- テキスト代だけ出して、試験日に日曜の当番を入れる。入社したばかりの人が、自分から「試験なので休みます」とはなかなか言えません
- 登録講習の存在を伝えない。在籍者しか受けられない講習なので、会社が言わなければ本人は知らないままです
- 1回目で見切る。合格率2割弱の試験なので、1回目で落ちるのが普通です。1回で支援を切る制度だと、2回目を自腹でこっそり受けるか、受けるのをやめるかのどちらかになります
- 合格の報告で終わる。登録と宅建士証の交付を本人任せにして、気づいたら合格から1年が過ぎている。5人に1人の枠は、その間ずっと増えていません
もう一つ、「合格後◯年以内に辞めたら費用を返還」という取り決めを入れる場合は、労働基準法第16条(賠償予定の禁止)との関係が論点になります。考え方は施工管理の資格取得支援の記事に書いたので繰り返しませんが、入れるなら必ず社会保険労務士や弁護士に確認してください。
チェックリスト:宅建なしで採った人を、宅建士にできる会社か
まず最初の2つ(宅建士の人数と、次の増員で足りるか)を確かめてください。ここが足りていないなら、残りの項目より先に、採用計画そのものを見直す必要があります。
- 事務所ごとの業務従事者数と、専任の宅建士の数を言えるか(5分の1以上か)
- 次に営業を増やしたとき、宅建士の枠が足りるかを確認しているか
- 宅建を持っていない営業の、入社月と最初の受験年度を一覧にしているか
- 試験日と申込期限を、会社のカレンダーに先に入れているか
- 登録講習を会社として受けさせる方針を決め、申込み時期を逆算しているか
- 試験日とその前の期間に、案内・反響の当番を入れない決まりがあるか
- 1回目で落ちた場合も、翌年の受験を同じ条件で続けられる決まりになっているか
- 合格者の登録(実務経験2年か登録実務講習か)を、誰が判断するか決めているか
- 合格から1年以内に宅建士証の交付まで終わるよう、段取りを決めているか
- 求人票に「支援します」ではなく、入社後にいつ何が起きるかを書いているか
よくある質問
Q. 宅建を必須にしないと、宅建士の人数が足りなくなりませんか。
今の人数次第です。宅建業法施行規則第15条の5の3で、事務所の「宅地建物取引業者の業務に従事する者」の数に対して専任の宅建士は5分の1以上と決まっています。従事する人が5人までなら宅建士は1人、6人になると2人必要です。宅建なしで採ること自体は問題ありませんが、採った人が宅建士になるまでの設計がないと、次の増員のときに枠が足りなくなります。
Q. 登録講習は、入社前の内定者にも受けさせられますか。
登録講習を受講できるのは、宅地建物取引業に従事している方(従業者証明書をお持ちの方)に限られ、一般の方は受講できないと、不動産適正取引推進機構が案内しています。入社前の扱いは個別の状況によるので、受講を予定している登録講習機関に確認してください。
Q. 入社1年目で合格した人は、すぐに重要事項の説明ができますか。
できません。合格後に都道府県知事の登録を受け、宅地建物取引士証の交付を受けてはじめて宅建士として説明ができます。登録には実務経験2年以上か、登録実務講習の修了などが必要です。宅建士証は、試験の合格から1年以内に交付を受ければ法定講習が不要です。
Q. 受験料はいくらですか。
令和8年度の宅建試験の受験手数料は8,200円です(不動産適正取引推進機構)。登録講習を受ける場合は、講習の費用が別にかかり、金額は登録講習機関ごとに違います。受験料の額は毎年変わる可能性があるので、申込みの前に同機構の案内で確認してください。
Q. 宅建を持っている経験者と、持っていない未経験者、どちらを採るべきですか。
どちらかに決める話ではなく、事務所の宅建士の枠と、今いる人が宅建士になる見込みで決まります。枠に余裕がなく、今いる人の受験が1年以上先なら、次の1人は有資格者を優先したほうが安全です。余裕があるなら、宅建の有無より接客・提案の素養で採り、入社月から逆算した取得の道を用意するほうが、母集団は広く取れます。求める人物像の決め方は不動産営業の採用要件の決め方にまとめています。
おわりに
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
宅建なしで採るのは、母集団を広げるための正しい判断です。ただ、それで広がるのは「今年の枠」だけで、「2年後の枠」は、取らせる設計でしか広がりません。
日程を渡す。登録講習に出す。合格したあとの手続きまで見届ける。どれも費用としては小さいのに、ここまでやっている会社は多くありません。だからこそ、候補者から見て違いがはっきり出るところです。
今日はまず、宅建を持っていない営業の名前を書き出して、それぞれの入社月と、最初に受けられる試験の年度を横に並べてみてください。答えられない人が一人でもいたら、その人の最初の試験日を決めるところから始めてください。
売買仲介の採用を最初から通しで見直したい方は、売買仲介の採用 完全ガイドからどうぞ。
濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。