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不動産の歩合の相場は、数字より「見せ方」で応募が変わります【歩合率の設計つき】

2026.07.10読了 約12分

こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。

エージェント時代に何十社も担当した中で、給与も仕事内容もほぼ同じなのに、求人票の見せ方で候補者の反応が分かれる場面を頻繁に見ました。くわしくは「いい人が来ない」3つの見落としに書いています。

給与の額が同じでも、見せ方で反応は変わる。この記事は、歩合の相場、自社の歩合率の設計、求人票の書き方の順に進めます。保障給や最低賃金は別の記事に任せ、ここでは「相場と見せ方」に絞ります。

不動産営業の歩合の相場は? 数字と、求人票での見せ方

確認できた範囲では、歩合率の公的な統計は見つかりませんでした。読み物には「仲介手数料の8〜15%」という記述があり、noteに載せた求人票の例は10%です。求人票には、固定給・歩合率・実績を並べて書いてください。

歩合率の相場は、仲介手数料の何%ですか?

確認できた範囲で、歩合率の数字を出している資料は1つです。ダイヤモンド不動産研究所の記事が、固定給を月18〜27万円程度、歩合給を稼いだ仲介手数料の8〜15%程度と書いています。

ただしこの記事は2019年11月の公開(2020年6月更新)で、不動産会社の営業社員をまとめて扱っており、売買と賃貸を分けていません。公的な統計ではないので、自社の歩合率を決める根拠にはしないでください。自社の設計を並べる物差しにする程度が安全です。

手がかり数字読むときの注意
厚生労働省 job tag「住宅・不動産営業」の求人賃金(全国平均・月額)月29.5万円月額の平均で、歩合率の相場を示す数字ではない
ダイヤモンド不動産研究所の記事固定給 月18〜27万円程度/歩合 仲介手数料の8〜15%程度2019年11月公開。書籍をもとにした読み物で、売買と賃貸の区別なし

※出典:厚生労働省 職業情報提供サイト job tag、ダイヤモンド不動産研究所「不動産会社の営業社員は儲かる? それともブラック?」(2019年11月6日公開・2020年6月10日更新)。歩合率の公的な統計は、確認できた範囲では見つかりませんでした。

noteに載せた求人票の書き方の例は、月給28万円+仲介手数料の10%(入社2年目の平均で年収520万円)です。これは書き方の例で、相場を調べた数字ではありません。数字は御社のものに置き換えてください。固定給と歩合の比率の相場や、業務委託の歩合率との比較は、根拠にできる資料がないので扱いません。

年収の相場は、売買仲介でどのくらいですか?

職種別の目安は次のとおりです。売買仲介は、成果次第で上振れが大きい職種です。

職種年収レンジの目安
売買仲介400〜600万円(成果次第で800〜1,000万円超)
賃貸仲介300〜500万円
管理350〜500万円

※公的統計の数字ではなく、私が整理した目安として載せています。

売買仲介のレンジの上端は、求人票でつい大きく載せたくなる数字です。ただ、その載せ方が、あとで触れる落とし穴です。

歩合率10%は、1件あたりいくらですか?

歩合率を金額に直すには、仲介手数料の上限が要ります。宅地建物取引業法第46条は、報酬の額を国土交通大臣の定めに従うものとし、その額を超えた受け取りを禁じています。

売買の媒介の上限は、取引価格が400万円を超える部分で3.3%(消費税等相当額を含む)です。税抜で言えば「取引価格×3%+6万円」で、依頼者1人から受け取れる額の上限です。

取引価格手数料の上限(税抜)手数料の上限(税込)歩合率10%の場合(税抜の手数料が基準)
1,000万円36万円39.6万円3.6万円
3,000万円96万円105.6万円9.6万円
5,000万円156万円171.6万円15.6万円

※出典:宅地建物取引業法第46条(e-Gov法令検索)、「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年国土交通省告示第949号による改正後)。税込は課税事業者の場合。歩合率10%の列は、上限の満額を受け取り、税抜の手数料を歩合の基準にした場合の説明用の計算です。

この上限は、依頼者1人から受け取れる額です。売主と買主の両方から受ける取引をどう扱うかは会社の規程で変わるので、歩合の基準を先に決めてください。

3,000万円の物件を1件決めても、歩合は9.6万円です。歩合率が15%に高くても14.4万円で、年収は率と成約の件数を掛けて見ます。

賃貸の媒介は、別の定めです。同じ告示は、貸借の媒介で依頼者の双方から受け取れる報酬の合計を、借賃の1か月分の1.1倍(消費税等相当額を含む)以内としています。居住用建物では、依頼者の承諾がない限り、依頼者の一方から受け取れるのは借賃の1か月分の0.55倍以内です。賃貸の歩合率は、この記事では扱いません。

歩合の「基準」は何ですか? 手数料・粗利・売上で意味が変わる

「歩合10%」と書いてあっても、何の10%かで金額は変わります。仲介手数料なのか、会社の粗利なのか、売上なのか。noteの求人票テンプレにも、手数料の10%と、粗利の15%還元の2種類があります。

「15%のほうが高い」とは言えません。手数料の15%と粗利の15%では、母数が別物だからです。

求人票に、歩合の基準をどう書きますか?

「歩合あり」で終わると、読み手は金額を計算できません。基準・率・支給時期を書くと、読み手が自分で試算できます。

  • 基準:仲介手数料(税抜)/粗利 など、何に対する率か
  • 率:10%、15% など
  • 支給時期:成約の翌月、翌々月 など

この項目は、労働条件通知書の賃金欄にも書く内容です。通知書の書き方は労働条件通知書の書き方にまとめています。

固定給と歩合率は、どう組み合わせて設計しますか?

固定給を上げれば歩合率に回せる原資が減り、歩合率を上げれば固定給に回せる原資が減る、という関係があります。正解は会社ごとに違うので、自社の営業が実際にいくら受け取っているかから逆算して決めてください。

年収520万円に届くには、何件の成約が必要ですか?

noteの例の月給28万円、歩合率10%、年収520万円で計算します。賞与や手当はないと置いた、説明用の計算です。

固定給は28万円×12か月で336万円。520万円との差の184万円が歩合です。歩合率が10%なら、年間の仲介手数料(税抜)の合計が1,840万円要る計算になります。

3,000万円の取引(手数料96万円)なら、1,840万円÷96万円で約19件。月に1.6件ほどの成約です。両手の扱いは上に書いたとおり会社の規程で変わるので、歩合の基準を決めてから件数を数えてください。

この数字を、自社の実績で置き換えてみてください。平均年収を求人票に書く前に、その年収が何件の成約で作られているかを、社長が説明できる状態にしておくことです。

固定給を下げて、歩合率を上げてもよいですか?

設計としては選べます。ただ、固定給を下げると、成約ゼロの月の下限が低くなる。歩合が中心の給与には、最低賃金と、労働基準法第27条の保障給が関わってきます。法律の線は歩合給の最低賃金と保障給の記事で、固定給の下限を令和8年度の最低賃金と並べた表を載せています。

求人の見え方は、また別の問題。次の章で、見せ方の基準①〜③をお話しします。

求人票の給与欄は、どう書けば損をしませんか?

見せ方の基準は3本あります。①月給の下限、②固定とインセンティブの明示、③手当の年間換算です。どれも「給与を上げろ」とは言っていません。同じ給与のまま、見せ方を変える話です。

基準①:月給の下限は、全国平均の29.5万円を下回らないようにする

エージェント時代の経験則です。住宅・不動産営業の求人賃金は、全国平均で月29.5万円です(厚生労働省 job tag「住宅・不動産営業」の求人賃金・月額)。これは平均値で、求人サイトの絞り込みの境界ではありません。月給の下限が平均より低いと、給与で絞り込む人の目に入りにくくなる場合がある、というのが私の見立てです。

たとえば、インセンティブ込みなら年収600万円を出せる会社が、固定給の下限を「月給24万円〜」と載せたとします。中身は600万円なのに、24万円の看板ひとつで、土俵に上がれていないかもしれません。

これ、婚活アプリで条件検索の枠から外れて、顔写真すら見てもらえない状態と同じなんですよね、、。相手はあなたの中身を嫌ったわけではなく、中身を知る画面にたどり着けていないんです。

固定給をすぐに上げられない会社は、次の基準②で内訳を明示してください。

基準②:固定とインセンティブのバランスを明示する

一番まずいのは、インセンティブを匂わせて固定給を薄く見せる書き方です。

Before(NG)

  • 月給25万円+インセンティブ(頑張り次第で高収入も可能!)

After(OK)

  • 月給28万円+仲介手数料(税抜)の10%を還元(入社2年目の平均で年収520万円)

固定給を明示し、インセンティブを「手数料の◯%」という仕組みで見せ、最後に平均年収の例を添えます。この520万円は書き方の例です。御社の数字に置き換えてください。

月給28万円は全国平均の29.5万円より低いので、出せる会社は寄せてください。寄せたら平均年収の数字も計算し直します。

基準③:手当は「年間換算」で見せる

不動産営業は、宅建手当、役職手当、住宅手当と、手当の種類がある職種です。月額のまま小さく書くと、せっかくの魅力が桁に埋もれます。

  • 宅建手当 月3万円 → 年36万円
  • 皆勤・営業手当なども合算して → 「基本給+手当で年間◯◯万円」

嘘は一切ついていません。事実を、求職者が会社を比べる物差し(年収)に合わせて言い直しました。

損している見せ方は、どんなものですか?(NG例)

心当たりを探すつもりで読んでみてください。

  • 上限を大きく見せる:「年収1,000万円可能!」。トップ1名の数字を平均のように載せると、入社後に「話が違う」になりかねません。使うなら全営業の平均値にします。
  • レンジが広すぎる:「月給25〜80万円」。下限と上限のどちらが本当か、読み手に判断を預けてしまいます。レンジで書くなら、入社2年目の在籍者の平均のような実績の数字を添えてください。

「年収1,000万円可能!」は、相場の表で「載せたくなる」と言った、あの800〜1,000万円超のことです。上限の数字を平均のように見せると、入社後の話の食い違いにつながります。

年収の実績は、規程と分けて書く

固定給と歩合率は会社の規程で、年収の数字は実績です。同じ欄に混ぜず、実績には「入社2年目の在籍者の平均」のように、誰の何年目の数字かを添えます。休日や残業での規程と実績の分け方は、休日・残業の書き方の記事に同じ考え方で書いています。

保存用:歩合・給与欄のチェックリスト

  • 歩合の基準(税抜の手数料/粗利/売上)を書いたか
  • 歩合率と、支給時期を書いたか
  • 月給の下限が全国平均の月29.5万円を下回っていないか(下回るなら内訳を明示したか)
  • 想定年収は、トップ1名ではなく全営業の平均になっているか
  • 想定年収が何件の成約で作られているか、社長が説明できるか
  • 宅建手当などを年間換算で書いたか
  • レンジで書く場合、入社2年目の平均などの実績を添えたか
  • 歩合が出ない月の下限(最低賃金・保障給)を確認したか

上から3項目を先に埋めてください。ここが埋まると、残りは判断しやすくなります。自社の求人票は求人票セルフ添削チェッカーで、給与欄以外の抜けも確かめられます。

よくある質問

Q. 歩合率の相場は、公的な統計にありますか?

確認できた範囲では、ありません。読み物には「仲介手数料の8〜15%程度」とありますが、2019年の記事で、売買と賃貸も分かれていません。自社の営業が実際にいくら受け取っているかから決めてください。

Q. 正直、固定給を全国平均の29.5万円まで上げる余力がありません。

無理に上げる必要はありません。基準②のとおり、固定給とインセンティブの内訳を明示して書いてください。求人サイトの絞り込みの仕様は媒体で違うので、各媒体で確認してください。

Q. インセンティブの平均額を出すと、低く見えて逆効果では?

その気持ちは分かります。でも、盛った上限で釣って入社後のギャップで辞められるよりは、実際の平均で来てくれた人のほうが話は噛み合います。平均が物足りないなら、見せ方ではなく設計そのものを見直すサインかもしれません。

Q. 未経験と経験者で、給与の見せ方は変えるべきですか?

私の求人票の型では、未経験向けは入社2年目の平均年収と育成のステップ、経験者向けは粗利の還元率・反響の件数・年収の実績を前に出しています。型は売買仲介の求人票テンプレ3型にまとめています。

Q. 賃貸仲介の歩合率の相場も同じですか?

この記事では扱いません。賃貸仲介の歩合率について、根拠にできる一次情報が手元にないためです。賃貸の報酬の上限は本文に書きました。歩合率は別途取材してから書きます。

Q. 業務委託にして歩合率を高く見せてもいいですか?

求人の見え方としては高く見えても、実態が会社の指揮命令を受けて働く形なら、労働者として扱われます。くわしくは歩合給の最低賃金と保障給の記事のFAQに書きました。

おわりに

読んでくださって、ありがとうございました。

給与欄を整えたら、次はタイトルと入社後の活躍イメージです。私たちが運用している不動産営業の求人では、この2か所を直して、応募0件の求人が10件ほどになることも珍しくありません。求人タイトルの付け方で、一覧で開かれる書き方をまとめています。

まずは自社の求人票を開いて、「歩合は基準と率で書けているか」「固定給の下限は全国平均の月29.5万円と比べてどうか」を確かめてください。条件を面接でどう伝えるかはオファー面談の進め方をどうぞ。

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濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。

濱
濱名 勇輝
元・不動産特化の人材紹介エージェント/株式会社Jingas COO

不動産に特化した人材紹介のエージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担ってきました。採用を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきた立場で、「なぜ応募が来ないのか」「なぜ決まらないのか」を、きれいごと抜きで書いています。

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