不動産・建設の「採用」だけを、現場の目線で。 元・不動産特化の人材紹介エージェントが執筆
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オファー面談で「想定年収800万」とだけ伝えていませんか。売買仲介の条件提示は、金額ではなく根拠で決まります

2026.08.24読了 約12分
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こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。

今日は、内定を出したあとの「条件を伝える場」のお話をしたいです。オファー面談とか、条件提示面談とか、会社によって呼び方はいろいろだと思います。

こういうこと、ありませんか。

「面接まではすごくいい空気だった。内定も出した。なのに条件の話をした日から、返事が急に遅くなった」

「最後に聞いたのは、他社さんの方が50万円高くて、という一言だった」

エージェント時代、この2つは本当に何度も見ました。そして正直に言うと、金額で負けていたケースは、そんなに多くありません。負けていたのは、金額の伝え方でした。

結論:条件は「金額」ではなく、3点セットで出してください

先に答えを書きます。売買仲介の条件提示で出すべきものは、次の3つです。

  1. 金額を分解して出す(固定給と歩合を切り離し、歩合が何から計算されるかまで書く)
  2. その年収に届いている人の道筋を、実在の形で見せる(何年目に、何件やって、どれくらいの粗利で、いくらになったのか)
  3. その日のうちに書面にして渡す(口頭で終わらせない)

この3つを、内定を出したその週にやる。それだけです。

派手な口説き文句はいりません。むしろ、口説き文句だけで金額の中身が空っぽだと、候補者は他社の提示額と数字だけを並べて比べます。そして数字だけの勝負になったら、資金力のある会社が勝ちます。

そこで勝負しないための話を、これから書きます。

なぜ売買仲介は「金額だけ」で比べられると勝てないのか

理由は単純で、売買仲介は年収の大半が歩合だからです。

例えば「想定年収800万円」と伝えたとします。候補者の頭の中では、これはただの800万円という文字列です。

一方で他社が「想定年収850万円」と言っていたとしたら、850の方が大きい。それだけで終わります。

でも実際には、この2つはまったく別物です。

  • 片方は、固定30万円+仲介手数料の15%還元で、反響が月20件配られる前提の800万円
  • もう片方は、固定22万円+歩合率は非公開で、自分で客付けする前提の850万円

中身を開けたら、前者の方が届く確率がはるかに高いことがあります。でも中身を開けて見せない限り、候補者にはただの800と850なんですよね、、。

ここが、売買仲介の条件提示の一番大事なところです。金額は比べられます。でも根拠は比べられません。根拠を出した会社だけが、数字だけの比べ合いから抜け出せます。

なお、求人票の段階での年収・歩合の見せ方は不動産営業の年収・歩合、「損しない」見せ方に詳しく書いています。この記事は、その先の「一人に対して条件を出す場」の話です。

条件提示の3点セット

①金額を分解する

まず、こう伝えるのをやめてください。

Before(NG):「想定年収は800万円くらいを考えています」

After(OK):

  • 固定給は月30万円です。ここに、担当した取引の仲介手数料から15%を還元します。
  • 反響は支店全体で月20件前後入っていて、営業4名で回しています。
  • 入社1年目は固定+歩合で500万円前後、2年目以降で700〜900万円が現在のレンジです。

長いです。でも、この長さが信用になります。

分解して出すべき項目は、この5つです。

項目何を書くか
固定給月額の実額。みなし残業を含むなら、何時間分かも
歩合の計算元仲介手数料か、粗利か、売上か。どこから何%か
支給のタイミング契約日か、決済日か、入金月の翌月か
母数になる数字反響件数、営業人数、担当エリア、価格帯
到達レンジ1年目・2年目以降の実際の幅(最高額ではなく幅)

特に支給のタイミングは、経験者ほど気にします。決済ベースだと、入社してから最初の歩合が入るまで数ヶ月空くことがあるからです。ここを黙っていて入社後に発覚すると、「聞いていない」が始まります。

そして、これは言いにくい話なんですが、最高額を年収の代表値にしないでください。

「うちは1000万円プレイヤーもいます」は、事実であっても提示にはなりません。トップ1名の数字を全体の期待値として見せると、入社後に落差が出ます。私が見てきた早期離職も、入る前に思っていた仕事と、入ってからの実際がずれるところから始まるものが多かったです。

②到達している人の道筋を見せる

金額を分解したら、次はその金額に実際に届いている人を見せます。

これも具体的にです。例えば、こういう形になります。

  • 2年前に賃貸仲介から入った30歳の営業がいます。
  • 最初の3ヶ月は先輩の同行だけで、初契約は4ヶ月目でした。
  • 今は月に2〜3件で、去年の年収は760万円です。

この一段落があるかないかで、800万円という数字の意味がまったく変わります。数字が、道になるからです。

未経験を採る場合はもっと重要です。未経験の人にとって「年収800万円可能」は他人の話にしか聞こえません。1ヶ月目に何をして、3ヶ月目に何ができるようになって、6ヶ月目にどうなるかを見せて、初めて自分の話になります。

ちなみにこの「道筋を見せる」考え方は、そもそも求人票の段階から必要なものです。未経験の不動産営業を採る求人票の書き方に、育つ道筋の作り方を書いています。

③その日のうちに書面にする

3つめが、一番やられていないところです。

条件は、口頭で伝えて終わりにしないでください。

理由は2つあります。ひとつは実務的な理由で、もうひとつは法律上の理由です。

実務の方から書きます。候補者は、家に帰って家族に相談します。配偶者や親に「どういう条件だったの」と聞かれたときに、手元に紙が何もないと、本人の記憶で説明することになります。

すると、こうなります。

「固定が30万で、たしか歩合が15%くらいって言ってたと思う」

この「たしか」「くらい」「と思う」が3つ並んだ時点で、相談された側は不安になります。そして相談された側が不安になった転職は、かなりの確率で止まります。

一方、他社が労働条件通知書を紙で渡していたら、そちらは「書いてあるから」で話が終わります。ここで差がつきます。

もうひとつが法律上の理由です。労働条件の明示は、そもそも義務です。

労働基準法第15条第1項で、使用者は労働契約の締結に際して、賃金や労働時間などの労働条件を労働者に明示しなければならないと定められています(一定の事項は書面の交付等による明示が必要です)。

そして採用内定は、単なる口約束ではありません。最高裁は大日本印刷事件(最高裁第二小法廷 昭和54年7月20日判決)で、事案に即して検討したうえで、採用内定によって就労の始期を付した解約権留保付きの労働契約が成立したと評価しています。つまり内定を出した時点で、契約の話がもう始まっているという前提で動くのが安全です。

さらに、2024年4月1日から明示すべき事項が増えています。厚生労働省によると、すべての労働者について、雇い入れ直後の就業場所・業務の内容に加えて、就業場所・業務の「変更の範囲」の明示が必要になりました(労働基準法施行規則第5条の改正)。

売買仲介にとって、これはかなり大きい話です。支店異動や転勤の可能性がある会社は多いですから。

「基本は◯◯支店ですが、将来的には都内の他支店への異動の可能性があります」

これを内定の時点で書いておくかどうかで、入社半年後の「そんな話は聞いていない」が起きるかどうかが変わります。書くと辞退される気がするから黙っておく、が一番損をします。黙って入社してもらっても、半年で辞められたら採用費はゼロからやり直しです。

求人票と条件が変わるときが、一番信用を落とします

ここ、実務で本当によく起きます。

求人票には「月給30万円〜」と書いてあった。でも面接をしてみたら経験が思ったより浅かったので、提示は27万円にした。

やること自体は、あっていいと思います。問題は伝え方です。

職業安定法第5条の3では、求人の申込みの際に明示した従事すべき業務の内容や賃金、労働時間その他の労働条件を変更して労働契約を締結しようとする場合には、その相手方となろうとする者に対して、変更する内容を明示しなければならないと定められています。いわゆる変更明示です。

なお2024年4月1日からは、求人の段階で明示すべき事項にも「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準」が追加されています。

法律の話に見えますが、私が現場で見てきた限り、これは信用の話です。

条件が下がること自体で辞退した人より、下がったことを説明されずに書類で気づいた人の方が、はるかに強く辞退します。しかも後者は、辞退の理由を正直に言ってくれません。「他社に決まりました」で終わります。

伝えるなら、こうです。

  • 求人票では月給30万円からとお伝えしていましたが、今回のご提示は27万円です。
  • 理由は、反響対応の経験がこれからという点で、最初の半年は同行を中心に置きたいからです。
  • 半年後の評価で30万円のラインに乗せる想定でいます。そこの基準も、今お伝えします。

下げる理由と、戻す道筋。この2つをセットで出せば、条件が下がっても話は続きます。理由を言わずに数字だけ下げると、そこで終わります。

もうひとつ、金額を下げるときに見落とされがちな点があります。月給の表示額を下げると、求人媒体の絞り込みから外れる水準に入ってしまうことがあるということです。ここの目安は不動産営業の年収・歩合、「損しない」見せ方に書きました。次の募集の原稿にそのまま響くので、提示を下げた理由は原稿側にも反映させておいてください。

「他社と迷っています」と言われたときにやってはいけないこと

一番やりがちなのが、その場で条件を上乗せすることです。

気持ちはすごくわかります。目の前で他社の名前が出たら、なんとかしたくなりますよね、、。

でも、上乗せ合戦を始めた瞬間に、勝負の土俵が「資金力」になります。中小の売買仲介会社が、大手と資金力で競り合って勝てるでしょうか。まず勝てません。しかも仮に競り勝っても、金額で入ってきた人は、次に金額で出ていきます。

やるべきなのは、候補者が転職を考え始めた理由に話を戻すことです。

「今回の転職で、一番変えたかったことは何でしたか」

この質問に本人が自分で答え直すと、金額以外の軸が本人の口から出てきます。反響の数だったり、飛び込みがないことだったり、支店の人数だったり。そこで初めて、自社の条件を「その軸に対する答え」として置き直せます。

これは面接で口説くときと同じ構造です。詳しくは面接は「口説く」場に書きました。

もうひとつ、エージェント側から見た本音を書いておきます。

紹介会社を使っている場合、エージェントは複数の求人を持っていて、どの会社を最初に薦めるかを毎日決めています。そのときの判断は、だいたい内定が出る率・承諾される率・選考のスピード・単価の掛け算です。

だから、提示レンジをきちんと開示して、決まる確率が高くて、レスが速い会社は、次の候補者でも最初に名前が挙がります。条件提示のやり方は、その1人だけの話ではなく、次に紹介される人の数まで変えるということです。

このあたりの内情は紹介したくない不動産会社の特徴に、もう少し踏み込んで書いています。

NG例:条件提示でよく見る5つ

  • 年収の最高額だけを伝える:「1000万円プレイヤーもいます」。事実でも、提示にはなりません
  • 歩合率をぼかす:「成果に応じて還元します」。候補者は計算できないので、比べられる他社の数字に流れます
  • 口頭のみで、書面はあとから:家族に説明できない条件は、家族に止められます
  • 求人票から下げた理由を言わない:数字だけ下げると、下げ幅の大小に関係なく信用が落ちます
  • その場で上乗せする:土俵が資金力に変わります。そして次も金額で揺れます

早見表:オファー面談でやること

タイミングやること
内定を出した当日条件提示の場を設定する(面接から日を空けない)
提示の場で固定・歩合の計算元・支給時期・母数・到達レンジを分解して伝える
提示の場でその年収に届いている社員の道筋を、年数と件数で見せる
提示の場で就業場所・業務の変更の範囲まで伝える(異動の可能性を隠さない)
求人票と違う条件なら変更した内容・理由・戻す基準をセットで伝える
提示の場〜当日中労働条件通知書を書面(または電子)で渡す
迷っていると言われたら上乗せせず、転職を考え始めた理由に話を戻す
承諾が出たら退職交渉と入社日の設計に入る

なお、この一連の流れは速さがすべてを台無しにします。内定から条件提示まで1週間空けた時点で、ここまでの設計はほぼ効きません。目安は不動産営業の選考、遅いだけで辞退されますにまとめています(書類は当日から翌営業日、面接結果は翌日から3営業日、内定は即日から2営業日)。

そして承諾が出たあとは、また別の勝負が始まります。そこは内定承諾のあとに消えるに書きました。

よくある質問

Q. オファー面談は、誰が出るのがいいですか。 A. 条件を決められる人が出てください。中小の売買仲介なら社長が一番いいと思います。理由は、その場で出た質問に「持ち帰って確認します」を挟まずに答えられるからです。持ち帰りが1回入るたびに、候補者の熱は確実に下がります。人事や採用担当だけで出るなら、少なくとも歩合の計算と評価の基準は、事前に社長と握って持っていってください。

Q. 歩合の仕組みを細かく出すと、社内の給与が知られてしまいませんか。 A. 個人の実額を出す必要はありません。出すのは計算の仕組みと、レンジです。「2年目以降は700〜900万円」で十分伝わります。むしろ仕組みを隠したまま数字だけ出す方が、社内にも社外にも不信を生みます。

Q. 内定を出したあと、条件提示までどれくらい空けていいですか。 A. 空けない方がいいです。私の感覚では、内定通知と条件提示は同じ週に収めたいところです。理由は、候補者はほぼ全員が複数社を並行して受けていて、最初に具体的な条件を紙で見せた会社が、比較の基準になるからです。あとから出す側は、常に相手の数字と比べられる立場になります。

Q. 労働条件通知書は、紙で渡さないといけませんか。 A. 書面の交付が原則ですが、労働者が希望した場合には、ファクシミリや電子メール等(出力して書面を作成できるものに限られます)による明示も認められています。実務上は、面談の場で紙を渡して、同じものをメールでも送るのが一番安全で、候補者にとっても親切だと思います。

Q. 提示を上げるくらいなら、紹介会社を使った方が早い気がします。 A. そこは一度、金額で並べてみてください。売買仲介で人材紹介を使うと、1名あたり150万円前後になることが多いです(理論年収500万円前後に対して30%前後という水準です)。同じ150万円を、提示年収を上げる方に回すという考え方もあります。ただ、提示を上げても条件の中身を説明できなければ結果は同じなので、順番としては「根拠を出せるようにする」が先です。単価の内訳は不動産営業の採用は1人いくらかかるのかに並べています。


濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。

売買仲介の採用を工程ごとに見直すなら、売買仲介 営業の採用 完全ガイドにまとめています。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

条件提示は、採用の中で一番「事務作業」に見える工程だと思います。金額を決めて、伝えて、書類を出す。それだけに見えます。

でも実際は、ここが候補者にとってその会社が自分をどう扱うかを初めて具体的に見る場所です。ぼかされたのか、分解して説明されたのか。紙が出てきたのか、口頭で終わったのか。入社前に受けたその扱いを、みんな覚えています。

とはいえ、日中は自分の案件を回している社長が、内定のたびに歩合の計算根拠を整理して、通知書を用意して、変更明示まで気を配るのは、正直かなりの負担だと思います。そこは、求人票の設計から条件提示の組み立て、内定後のフォローまで、採用の実務ごと私たちが人の手で伴走します(基本料金は月額10万円)。まずは無料相談で、「今の提示の出し方だと、他社の数字と何で比べられているか」だけでも、一緒に見させてください。

【出典】厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」(労働基準法施行規則第5条の改正)/労働基準法第15条第1項/職業安定法第5条の3/最高裁判所第二小法廷 昭和54年7月20日判決(大日本印刷事件)

濱
濱名 勇輝
元・不動産特化の人材紹介エージェント/株式会社Jingas COO

不動産に特化した人材紹介のエージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担ってきました。採用を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきた立場で、「なぜ応募が来ないのか」「なぜ決まらないのか」を、きれいごと抜きで書いています。

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