こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。
今日は、施工管理の採用で、面接の手前にある書類選考のお話をしたいです。
施工管理の応募が来て、職務経歴書を開く。そこに並んでいるのが、こんな行だったりします。
- 2021年4月〜2023年3月 ○○マンション新築工事 施工管理
- 2023年4月〜2024年9月 ○○ビル改修工事 施工管理
どうでしょう。これで、この人が現場を回せるかどうか、判断できますか。
できないんですよね、、。ここで多くの会社が取る道は2つです。「よく分からないから、資格欄だけ見て決める」か、「判断がつかないまま、何日も寝かせてしまう」か。
どちらも、もったいない終わり方です。今日はその間にある、3つ目の道を書きます。
結論:書類選考は「面接で何を聞くか」を決める場です
先に答えを言います。
- 書類で落としてよいのは、2種類だけです。①配置技術者としてすぐ置く前提で、法律上の要件に当たらない人。②求人票で「必須」とはっきり書いた経験が、書類上どこにも見当たらない人
- 工事実績は、5つの欄で読みます。工事の中身/工期/立場/同時に持っていた現場/担った管理。書いていない欄は、落とす理由ではなく、面接で聞く質問に回します
- 結果は当日から翌営業日に返します。欄を決めて読むと、迷う時間が減るので、この速さが守れるようになります
私は施工管理の職務経歴書を、人材紹介の現場で数えきれないほど見てきました。そこではっきり言えるのは、書類の書き方の上手い下手と、現場を回す力は、ほとんど一致しないということです。
以前の施工管理の面接で「すぐ辞める人」を見抜く質問でも書いたとおり、辞めた人の経歴書を後から見返しても、辞める理由はどこにも書いていません。書類は、見極める場所ではないんです。見極めるための問いを用意する場所です。
工事実績を読む5つの欄
施工管理の工事実績は、次の5つの欄に分けて読んでください。書類にあればそのまま使い、無ければ右の列の質問を面接用のメモに書き写します。
| 欄 | 見ること | 書いていなければ、面接でこう聞く |
|---|---|---|
| ① 工事の中身 | 用途(マンション・オフィス・工場・道路など)、構造(RC・S・木造など)、規模(階数・延べ面積・請負金額の桁) | 「この現場は、何造の何階建てで、どのくらいの規模でしたか」 |
| ② 工期と従事期間 | 工事全体の期間と、その人が入っていた期間。着工から竣工まで通しで見たのか、途中からか | 「着工から竣工まで、通しで入っていましたか」 |
| ③ 立場 | 元請か下請か。その現場での役割(現場代理人・主任技術者・監理技術者・その下の担当) | 「元請の立場でしたか、下請の立場でしたか。その現場で、所長はほかにいましたか。ご自身はどこまで任されていましたか」 |
| ④ 同時に持っていた現場 | 1現場に専念していたのか、小さな現場を掛け持ちしていたのか | 「同じ時期に、ほかの現場も見ていましたか。何現場くらいですか」 |
| ⑤ 担った管理 | 工程・品質・安全・原価のうち、どれを自分の責任で持っていたか。書類・施主・近隣の対応をどこまでやっていたか | 「工程が遅れそうになったとき、誰と何を調整しましたか」 |
①と②は、比較的よく書かれています。書かれていないことが多いのは、③④⑤です。
そして、施工管理の採用でいちばん大事なのも、この③④⑤なんです。「○○マンション新築工事」という工事名は同じでも、その現場の所長だった人と、所長の下で写真と書類を担当していた人では、入社後にお願いできる仕事がまったく違いますから。
いちばん書かれていないのが「立場」です
③の立場を、少し掘ります。
公共工事には、コリンズ(工事実績情報サービス)という、一般財団法人日本建設情報総合センター(JACIC)が運営する実績のデータベースがあります。国や自治体などの公共機関等から直接受注した元請工事で、1契約あたりの請負金額が500万円以上のものが登録の対象です。
このコリンズでは、工事の情報と一緒に、その工事に配置された技術者が登録されます。そして技術者ごとに「役割」を選ぶ形になっていて、登録マニュアルには現場代理人、監理技術者、主任技術者、担当技術者といった役割が並んでいます。担当技術者の場合は、担当した工種まで入力します。
つまり、公共工事の実績の世界では、1つの工事に複数の技術者がいて、それぞれ役割が違うことが前提になっているんです。職務経歴書の「○○新築工事 施工管理」の1行は、この役割の区別をすっぽり落としています。
ここで気をつけてほしいのは、コリンズの登録の対象が、公共機関等から直接受注した元請工事に限られていることです。一般の民間工事(デベロッパー発注のマンションなど)や下請の現場は、原則として登録の対象外です。コリンズに実績が無いことは、経験が無いことを意味しません。
なお、コリンズに登録された自分の実績は、技術者本人が申し込めば「技術者実績確認書」として発行してもらえます(有料・申込みは本人のみで、企業からは申し込めません)。公共の元請の経験を強みにしている人なら、面接で「確認書を取ったことはありますか」と聞くのは失礼ではありません。ただ、書類選考の段階で提出を求めるものではないと私は考えています。民間中心の人を、その時点で不利に扱うことになるからです。
資格欄は、3つの段で読み分けてください
資格欄も、「1級があるかないか」の1段で読むと取りこぼします。
- 1級・2級の施工管理技士:第二次検定に合格した人です。2級は、建築なら「建築」「躯体」「仕上げ」、土木なら「土木」「鋼構造物塗装」「薬液注入」の検定種別で、要件に当たる業種が変わります(工種と資格の対応にまとめました)
- 1級・2級の技士補:第一次検定に合格した人です。それだけで配置技術者になれるわけではありませんが、第二次検定へ向かっている途中の人でもあります(技士補の扱い)
- 監理技術者資格者証:専任の監理技術者として現場に置くときに必要になるカードです(建設業法第26条第5項)。建設業法施行規則第17条の37で、記載事項に「建設業の種類」と、建設業者の業務に従事している場合はその会社の商号と許可番号が入ることになっています
資格者証について、1つだけ実務の注意を書いておきます。所属している会社が変わったときは、30日以内に届け出て記載を変えてもらう必要があります(同規則第17条の38)。入社してもらう場合は、この手続きも入社前後の段取りに入れておいてください。
資格の真偽の確認は、書類選考で細かくやる必要はありません。内定の前後で、技術検定の合格証明書や資格者証を見せてもらえば足ります。書類選考でやるのは、資格欄の書き方から「どの段の人か」を読み分けることだけです。
書類で落としてはいけない4つ
ここからは逆側です。施工管理の書類選考で、落とす理由にしてしまいがちなのに、落としてはいけないものを4つ挙げます。
1つ目:転職回数
転職の回数だけでは、なぜ移ったのかが分かりません。落とす理由にせず、面接で聞く側に回してください(考え方はスカウトは「誰に送るか」で決まりますに書きました)。
2つ目:工種の違い
建築の会社に、土木の人が応募してきた。ここで即落とすと、法律上は要件に当たる人や、所長の右腕になれる人まで落とすことがあります。工種の線の引き方は工種の記事を見てください。
3つ目:年齢
年齢そのものを書類選考の条件にするのは、法律上の例外に当たる場合を除いてできません(施工管理の求人票と年齢制限)。
4つ目:書類が薄いこと
冒頭の2行のような職務経歴書は、珍しくありません。現場で忙しく働いてきた人ほど、書類づくりに時間をかけていないこともあります。薄いこと自体は、現場の力とは関係がありません。5つの欄のうち空いている欄を、面接の質問に書き写すだけです。
落としてよいものは、求人票の側で決まっています
反対に、落としてよいものは冒頭の2種類でした。
①の「配置技術者としてすぐ置く前提」は、今回の採用が、入社してすぐ主任技術者・監理技術者として名前を出す人なのか、所長の下で現場を回す人なのかで変わります。後者なら、資格の要件は必須ではありません。
②の「求人票で必須と書いた経験」は、そもそも求人票に何を必須と書いたかで決まります。
ここが大事なところで、書類選考で迷う会社は、たいてい求人票の「必須」と「歓迎」の線があいまいです。線があいまいだから、1通ごとに「この人はどうだろう」と考え込んで、結果が遅れる。書類選考を速くしたいなら、求人票の必須欄を先に直すほうが近道です。
求人票の必須・歓迎や、工種・規模・工期が書けているかは、施工管理の求人票セルフ添削チェッカーに貼り付ければ、その場で分かります(登録不要)。
応募書類そのものにも、気をつけてほしいことがあります
自社で応募用の書式(社用紙)を作っている会社は、欄を一度見直してください。
厚生労働省は、公正な採用選考の観点から、令和3年4月に履歴書の様式例を作っています。JIS規格の様式例との違いは、性別欄を任意記載にしたことと、「配偶者」「扶養家族数」「配偶者の扶養義務」「通勤時間」の欄を設けないことです。
そして厚生労働省の資料は、別の様式の応募用紙を使う場合について、「就職差別につながる項目を含めないよう留意が必要」と書いています。本籍や家族のことを書かせる欄が社用紙に残っていたら、削ってください。施工管理の仕事の力を判断するのに、必要のない情報です。
結果は当日から翌営業日。見送るなら、理由を1行
5つの欄と、落としてよい2種類が決まっていれば、1通を読む時間はぐっと短くなります。
書類選考の結果を返す速さの基準は、職種を問わず同じで、当日から翌営業日です。これは私が紹介の現場で使っていた基準で、遅れると何が起きるかは選考が遅いだけで辞退されますに詳しく書きました。
もう1つ、紹介会社経由の応募を見送るときは、理由を1行でいいので添えてください。「総合的に判断して」だけの見送りが続くと、紹介会社は次に誰を出せばいいのかが分かりません。「今回は、配置技術者として建築一式の主任技術者に当たる方を優先しています」と1行あれば、次の推薦の精度が上がります(見送りの文面は不採用連絡の出し方を参考にしてください)。
実例:冒頭の2行を、5つの欄で読むとこうなります
冒頭の職務経歴書を、実際に5つの欄に当ててみます(例として作った経歴です)。
書類に書いてあったこと
- 2021年4月〜2023年3月 ○○マンション新築工事 施工管理
- 2023年4月〜2024年9月 ○○ビル改修工事 施工管理
- 資格:2級建築施工管理技士
5つの欄で読んだ結果
- ① 工事の中身:用途(マンション・ビル)と、新築か改修かだけは分かる。構造・規模は不明
- ② 工期と従事期間:それぞれ2年と1年半。通しで入っていたかは不明
- ③ 立場:不明
- ④ 同時に持っていた現場:不明
- ⑤ 担った管理:不明
- 資格:2級建築。検定種別(建築・躯体・仕上げ)は不明
このうち、落とす理由になるものは1つもありません。空いている欄が多いだけです。なので、この人は面接に呼びます。
面接用のメモ(空いた欄から書き写したもの)
- 「マンションの現場は、何造の何階建てくらいでしたか」
- 「着工から竣工まで、通しで入っていましたか」
- 「その現場に所長はほかにいましたか。ご自身はどこまで任されていましたか」
- 「改修の現場のときは、同時にほかの現場も見ていましたか」
- 「工程が遅れそうになったとき、誰と何を調整しましたか」
- 「2級の種別は、建築・躯体・仕上げのどれですか」
これだけです。面接の冒頭の10分ほどでこれを埋めてしまえば、残りの時間は、見抜く質問や、面接で口説くことに使えます。
事実の確認を書類選考で全部終わらせようとするから、書類選考が遅くなるんです。事実の確認は、面接の冒頭で済ませればいい。これが今日いちばん伝えたかったことです。
書類選考でよくある失敗5つ
- 資格欄だけ見て決める。2級や技士補の人、資格は無いが所長の下で長く現場を回してきた人を、まとめて落としています
- 「施工管理」の1行を、所長の経験だと思い込む。立場が書いていないなら、面接で聞くまで分かりません
- コリンズに実績が無いことを、経験が無いことだと読む。コリンズの登録対象は公共機関等から直接受注した元請工事で、一般の民間工事や下請の現場は原則として載りません
- 書類選考で事実の確認を全部やろうとして、結果が3営業日を超える。確認は面接の冒頭に回してください
- 社用紙に、本籍や家族を書かせる欄が残っている。仕事の力と関係のない情報を、応募の時点で集めています
チェックリスト:施工管理の書類選考
- 今回の採用が「配置技術者としてすぐ置く人」か「所長の下で現場を回す人」かを決めた
- 求人票の「必須」と「歓迎」の線を、はっきり書き分けた
- 工事実績を、工事の中身・工期・立場・同時に持っていた現場・担った管理の5つの欄で読んでいる
- 空いている欄は、落とす理由にせず面接用のメモに書き写している
- 資格欄を、技士・技士補・資格者証の3つの段で読み分けている
- 2級の人は、検定種別まで確認することにしている
- コリンズに実績が無い人を、経験が無い人として扱っていない
- 転職回数・工種の違い・年齢・書類の薄さを、落とす理由にしていない
- 社用紙に、本籍・家族・配偶者などの欄が残っていない
- 書類選考の結果を、当日から翌営業日に返している
- 紹介会社経由の見送りには、理由を1行添えている
全部を一度に変えなくて大丈夫です。順番をつけるなら、まず上の2つ(誰を採るかと、必須欄)。ここが決まると、残りの9つは読むたびに迷わなくなります。
よくある質問
Q. 職務経歴書が無く、履歴書だけで応募してきた人はどうすればいいですか。
A. それだけで落とさず、面接に呼んで5つの欄を口頭で埋めてください。書類を追加で出してもらうのは、面接のあとでも遅くありません。書類をそろえるまで選考を止めると、その間に他社の選考が先に進みます。
Q. 所長経験を必須にしたい場合、書類で何を見ればいいですか。
A. ③の立場の欄です。「所長」「現場代理人」「主任技術者」と書いてあれば、その工事の中身と規模を①で確かめます。書いていなければ、落とすのではなく面接で「その現場に所長はほかにいましたか」と聞いてください。書き方の問題で、所長経験のある人が書類から消えていることがあります。
Q. コリンズの技術者実績確認書を、全員に出してもらうべきですか。
A. おすすめしません。確認書に載るのはコリンズに登録された公共機関等からの元請工事で、一般の民間工事や下請の現場は原則として載らず、発行は本人の申込みで有料です。民間中心の人を、書類の時点で不利に扱うことになります。公共の元請の経験を強みにしている人に、面接で任意で聞く程度にしてください。
Q. 書類選考を社長が見ると、どうしても遅くなります。
A. 5つの欄と、落としてよい2種類を紙1枚にして、書類選考は現場の責任者か採用担当の1人に任せてください。社長が見るのは面接からで十分です。基準が紙になっていれば、誰が読んでも同じ判断になります。
濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
職務経歴書の1行が薄いのは、その人の現場が薄いからではありません。書類の書き方の問題であることのほうが、ずっと多いです。今日はまず、手元にある応募書類を1通だけ開いて、5つの欄のうちどこが空いているかを数えてみてください。空いた欄は、そのまま面接の質問になります。
求人票の見直しから媒体・スカウトの運用、選考支援、定着まで、採用の実務ごと私たちが人の手で伴走します(基本料金は月額10万円)。まずは無料相談で、いまの求人票の「必須」と「歓迎」の線引きから、一緒に整理させてください。
施工管理の採用を最初から通しで見直したい方は、施工管理の採用 完全ガイドからどうぞ。
この記事で参照した一次情報
- 一般財団法人日本建設情報総合センター(JACIC)「コリンズ・テクリス 登録システム マニュアル(コリンズ利用者編)」(登録の対象となる工事/技術者データの役割)
- 同「技術者実績確認書発行サービス」
- 建設業法施行規則 第17条の36・第17条の37(監理技術者資格者証の交付申請と記載事項)/第17条の38(記載事項の変更等)
- 厚生労働省「履歴書の様式例の作成について」(令和3年4月16日 労働政策審議会安定分科会資料)