こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。
今日は、スカウトを送る「手前」のお話をしたいです。文面ではなく、誰に送るかを決めるところの話です。
スカウトの相談を受けると、だいたい最初に出てくるのはこれです。
「文面、変えたほうがいいですかね」
気持ちはすごくわかります。返信が来ないと、見えているのが文面だけなので、そこを直したくなるんですよね、、。1行目が大事なのは本当で、そこはスカウトの返信率を上げる1行目に書きました。
でも、私が自社でスカウトを毎日回していて思うのは、文面を直しても、送る相手がずれていたら結果は変わらないということです。
結論:落とす条件は最小限にして、決めるのは「うちで活躍している人の入り口」だけ
先に答えを書きます。
絞り込みで会社がやりがちなのは、条件を足すことです。でも足すほど、決まる確率は下がります。
やることは2つです。
- 今うちで活躍している人が、どこから入ってきたのかを言葉にする(それが送る相手)
- それ以外の条件は、機械的に落とさず、面談で聞くことに回す
これだけです。
「そんな雑でいいんですか」と言われることがあるんですが、雑にしているのではなくて、落とす場所を後ろにずらしているだけです。理由はこのあと書きます。
そもそも「誰に送るか」は、スカウトの工数のほぼ全部です
意外と知られていないんですが、スカウトの作業内容は、媒体によってかなり違います。
一通ずつ文面を書いて送るタイプの媒体もあれば、候補者を選んで送ることが中心で、一人ひとりに文面を書く形式ではない媒体もあります(engageのスカウトは後者です)。
後者の場合、作業として残るのは2つだけになります。
- 誰に送るかの判断
- その人が着地する求人票の中身
つまり、文面を磨く余地がそもそも無い媒体があるということです。そういう媒体で「返信が来ないから文面を見直そう」と言っていると、いつまでも直す場所にたどり着けません。
そして文面を書けるタイプの媒体でも、実は構造は同じです。送る相手が求人と噛み合っていないと、どんな1行目でも返ってきません。
条件を1つ足すたびに、母数は掛け算で減ります
ここが一番伝えたいところです。
まず前提として、スカウトは母数の勝負です。私たちの運用実感で言うと、送る数と決まる数の関係は数千通で1人です。この話は不動産営業のスカウトは「数千通で1人」に詳しく書きました。
この前提を置いたうえで、絞り込みの話をします。
条件を足すと、母数は足し算ではなく掛け算で減ります。
- 経験年数で半分になる
- そこに転職回数の上限を足して、また半分になる
- そこに前職の業種を足して、さらに半分になる
3つ足しただけで、8分の1です。もともと1万人いた母集団が、1,200人くらいになります。
そして先ほどの「数千通で1人」を思い出してください。1,200人しかいない母集団からは、そもそも数千通が送れません。
つまりこうなります。
条件を厳しくした会社は、返信率が低いのではなく、そもそも打席に立てていない。
「いい人がいないんですよ」と言われることが多いんですが、話を聞いていくと、いない側の問題ではなく、条件で自分から母数を消してしまっているケースがかなりあります。この構造は不動産営業に「いい人が来ない」会社が見落とす3つのことにも書きました。
軸①:活躍している人の「入り口」を逆算する
では何で絞るのか。ここが本題です。
私が一番効くと思っているのは、今その会社で活躍している人が、どこから入ってきたかです。
社長に聞くと、だいたいすぐ出てきます。
- 賃貸仲介から売買に移ってきた人が伸びている
- 住宅設備や保険の個人営業から来た人が、反響対応にすぐ慣れた
- 他社の売買仲介にいたが、追客の型が違って苦戦した
この3つ目が大事です。同じ職種の経験者が、必ずしも一番活躍するとは限らないんですよね。売買仲介の経験者でも、飛び込み中心の会社から反響中心の会社に来ると、やり方が変わって噛み合わないことがあります。
なので、絞るときに使うのは「売買仲介の経験があるか」ではなく、こういう形になります。
- 反響で来たお客様に、その日のうちに連絡を返す仕事をしていたか
- 個人のお客様に、高額な意思決定をしてもらう場に立っていたか
- 数字を自分で追いかける環境にいたか
こう置き換えると、母集団は業種をまたいで広がります。しかも、うちで活躍している人と同じ入り口なので、決まったあとの定着も読みやすくなります。
これは要件定義そのものの話でもあるので、売買仲介の採用要件、決め方で応募数が変わりますと合わせて読んでもらえると早いと思います。
軸②:転職回数や在籍社数は、落とす条件ではなく「面談で聞くこと」に回す
ここ、意見が分かれるところだと思います。
転職回数が多い人を機械的に外している会社は、けっこうあります。気持ちはわかります。すぐ辞められたら困りますから。
ただ、私がエージェント時代に見てきた限り、回数そのものは、辞める理由の説明になっていませんでした。
3社で辞めている人でも、理由を聞くと一本の線が通っていることがあります。逆に1社しか経験がなくても、動機が「今がしんどいから」だけの人は、次も同じところでしんどくなります。
なので、こう扱ってください。
- 落とす条件にはしない(母数が掛け算で減るので)
- 面談で必ず聞く項目に入れる(「そのときは、何を変えたくて動いたんですか」)
判断を、書類の段階から会って話す段階に後ろへずらす、ということです。スカウトの母数は減らさずに、見極めの精度は落とさない。この形が一番結果が出ています。
見極めで実際に何を聞くかは、不動産営業の面接で「すぐ辞める人」を見抜く質問にまとめてあります。
軸③:年齢は、要件にしないでください
これは実務の話であると同時に、法律の話でもあります。
労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)第9条では、事業主は労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならないと定められています。
例外は、同法施行規則第1条の3で限定的に定められているもの(定年の定めがある場合に定年年齢を下回ることを条件とするときや、法令で特定の年齢層の就業が制限されている業務のときなど)に限られます。「若い人が欲しいから」は、この例外に入りません。
そのうえで、実務としても年齢で切るのはあまり得をしません。
理由は2つあります。ひとつは、さっきの掛け算です。年齢のレンジを狭めた分だけ、母数が消えます。
もうひとつは、年齢が何かの代わりに使われていることが多いからです。「若い人がいい」と言う社長に、その理由を聞いていくと、だいたい別のことを言っています。
- 素直に型を覚えてほしい
- 長く働いてほしい
- 体力的にきつい時期がある
これ、全部年齢ではなく別の言葉で書けます。そして別の言葉で書いたほうが、伝わる相手が増えます。求人票での年齢表現の扱いは未経験の不動産営業を採る求人票の書き方にも触れています。
それでも「送らない方がいい」ケースはあります
母数を減らすなと書いてきましたが、送らない判断が正しい場面もあります。ただしそれは候補者の側ではなく、受け取る側の準備ができていないときです。
- 求人票が、その人が読んで自分事にならない状態のとき:スカウトの着地先が求人票なので、そこが弱いと母数を増やすほど無駄が増えます
- 返信が来ても、その日に返せる人が社内にいないとき:返信は応募ではないので、放置すると数日で消えます
- 今月は面接ができないとき:会えない時期に母数だけ増やすと、一番熱い返信を捨てることになります
3つとも、候補者の問題ではなく自社の問題です。ここが整っていないなら、送る前に整える方が結果は早いです。返信が来たあとの初動については応募が来たあとの24時間が勝負ですに書きました。
NG例:絞り込みでよく見る5つ
- 前職の業種で切る:「不動産経験者のみ」。活躍している人の入り口とずれていることがあります
- 転職回数の上限で機械的に外す:回数は理由の説明になっていません。面談で聞く項目に回してください
- 年齢のレンジを要件にする:法令上も原則として認められず、母数も削れます
- 条件を3つ以上重ねる:8分の1になります。数千通が送れなくなります
- 返信が来ないから文面だけ直す:文面を書けない形式の媒体もあります。まず送る相手を見てください
チェックリスト:送る相手を決めるとき
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 今活躍している営業3人が、どこから入ってきたかを書き出す |
| 2 | その3人に共通する「していた仕事」を、業種ではなく動作で書く |
| 3 | それを検索条件に置き換える(業種名ではなく、経験の中身で) |
| 4 | 落とす条件は最小限にする。迷ったら残す |
| 5 | 転職回数・在籍社数は、面談で聞く質問リストに移す |
| 6 | 年齢は要件にしない。言い換えたい理由を別の言葉にする |
| 7 | 送る前に、求人票と返信対応の担当を確認する |
| 8 | 1ヶ月で送り切れる母数になっているかを見る |
よくある質問
Q. 条件を緩めると、明らかに合わない人にも送ることになりませんか。 A. なります。ただ、合わない人に送るコストと、母数が足りずに決まらないコストを比べると、後者の方が大きいです。スカウトは数千通に対して1人という前提なので、母数が削れた時点で結果がほぼ決まります。合わない人は、返信が来た段階で会わない判断をすればいいと思います。判断を後ろにずらす、という考え方です。
Q. 未経験にも送るべきですか。 A. 受け入れる体制があるなら送った方がいいです。ただし未経験に送るなら、着地する求人票が「育つ道筋」を見せている必要があります。そこが無いまま母数だけ広げると、返信は増えても面談で全部止まります。順番としては、求人票を直してから母数を広げてください。
Q. どのくらいの期間で送り切るのがいいですか。 A. 私たちの実感では、決まるまで1ヶ月あれば決まります。逆に言うと、1ヶ月で数千通を送り切る密度が要るということです。週に50通ずつ送っていると、同じ母数でも結果が変わります。人が足りないなら、条件を絞るより、送る期間を短く区切って集中させる方が効きます。
Q. 一度送った人に、もう一度送ってもいいですか。 A. 求人の中身が変わっているなら、間を空けてもう一度で問題ないと思います。ただし前と同じ内容で連投するのは逆効果です。候補者側には履歴が見えているので、「同じものがまた来た」と受け取られます。
Q. 送る相手の条件は、誰が決めるべきですか。 A. 現場を見ている人です。活躍している営業の入り口を知っているのは、社長か営業責任者だと思います。ここを採用担当だけに任せると、どうしても求人票に書いてある文字(業種名・経験年数)から条件を作ることになって、実際に伸びている人とずれます。決めるのは最初の1回だけなので、そこは巻き取らずに一緒にやってください。
濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。
売買仲介の採用を工程ごとに見直すなら、売買仲介 営業の採用 完全ガイドにまとめています。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
スカウトの絞り込みって、丁寧にやるほど良い仕事をしている気になるんですよね。条件を細かく詰めて、リストを綺麗にして。私も昔はそう思っていました。
でも実際は、その丁寧さが母数を消していたということが本当によくあります。絞り込みは、精度を上げる作業ではなく、打席の数を決める作業です。
とはいえ、活躍している人の入り口を言語化して、条件に落として、1ヶ月で送り切って、返信に即レスする。これを本業の合間にやるのは、正直かなりきついと思います。そこは、要件の言語化から求人票の設計、スカウトの運用、返信対応まで、採用の実務ごと私たちが人の手で伴走します(基本料金は月額10万円)。まずは無料相談で、「今の条件だと母数が何人になっているか」だけでも、一緒に見させてください。
【出典】労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律 第9条/同法施行規則 第1条の3