こんにちは、株式会社Jingasの濱名です。
今日は、建設会社の社長とお話ししていて、いちばん答えが返ってこない質問のお話をしたいです。
「施工管理を1人採るのに、御社は今いくら使っていますか」
これを聞くと、たいてい少し間が空きます。「紹介が高いのは分かってる」「媒体にも払ってる」——そこまでは即答されるんですが、1人あたりいくらか、という形にはなっていない。それは社長の怠慢ではなくて、施工管理の採用単価は、請求書を全部足しても出てこないからなんです。
先に言っておくと、採用がうまくいく原理に、施工管理も不動産営業も違いはありません。私は不動産の人材紹介エージェント出身ですが、紹介の現場で見てきた「決まる会社・決まらない会社」の差は、職種を超えて同じ形をしています。ただ、お金の出方だけは施工管理に固有の事情があります。そこを今日は正直に書きます。
結論:採用単価は3つの費目の合計。多くの会社は1つ目しか見ていません
先に答えを言います。施工管理の採用単価は、この式で出します。
採用単価 =(① 出ていったお金 + ② 社内の人が使った時間の値段 + ③ 決まらない間に出ていった分)÷ 採用できた人数
ほとんどの会社が見ているのは①だけです。請求書が届くので、当然そうなります。でも、施工管理の採用でいちばん大きいのは、たいてい③です。そして②は、施工管理では他の職種より高くつきます。現場を持っている人が、採用も兼ねているからです。
この3つを並べると、「紹介は高い」「自社なら安い」という話が、まったく違う形に見えてきます。順番に見ていきます。
費目①:出ていったお金。施工管理は「率は同じなのに額が上がる」
まず、請求書が届くほうから。
人材紹介の手数料は、理論年収の30〜35%が標準です。不動産に特化した紹介会社が公開している料金表は、だいたいこの範囲に収まっています。ここで見てほしいのは、手数料を動かしているのは料率ではなく、掛けられる側の年収のほうだということです。
理論年収は、多くの場合「基本給×12ヶ月+賞与の見込み額」で計算されます。残業代や通勤手当は含みません(この中身は不動産営業の採用は1人いくらかかるのかに早見表で書きました)。施工管理は、有資格者や経験者になるとこの基本給と賞与の水準そのものが上がります。仮に理論年収600万円なら、30〜35%で180万円から210万円。資格手当を基本給に組み込んで提示していれば、さらに上に振れます。実際、施工管理で200万円台の手数料を払っている会社は、私たちが見ている範囲でも珍しくありません。
売買仲介の営業だと、同じ料率でも150万円前後に着地することが多いです。同じ「30〜35%」でも、施工管理は1人あたり数十万円ぶん高くつく。 これが、建設会社の社長が紹介の請求書を見て息をのむ理由です。
媒体側はどうか。掲載料を取らずに求人を置ける枠もありますし、有料プランに上げると候補者へこちらから声をかけられるようになる媒体もあります。金額はプランと時期で変わるので、ここでは断定しません。単価の計算で気をつけたいのは、無料枠は費用ゼロですが、応募もほぼ増えないということです。掛かっていないのは費用だけで、その間も費目③のほうは進んでいます(無料枠がなぜ応募につながらないかは施工管理が採用できない本当の理由に書きました)。
ここまでが、経理を開けば分かる費用です。多くの会社の採用単価は、ここで止まっています。
費目②:社内の人が使った時間。施工管理は、この時間がいちばん高い
「紹介は高いから、自社で採る」と決めた会社が、次にぶつかるのがここです。
自社採用は、お金がかからなくなったわけではありません。お金を、手数と時間に置き換えただけです。そして施工管理の場合、その手数を引き受けるのは誰か。専任の採用担当がいる建設会社は、正直そう多くありません。だいたい、工事部長か、現場を持っている所長か、社長ご自身です。
つまり、採用に使われる1時間が、現場の1時間なんです。ここが施工管理の採用単価を分かりにくくしている一番の原因だと思っています。他の職種なら夜や休日に寄せるという逃げ方もありますが、施工管理は候補者の側も現場にいるので、その時間帯が今度は選考の枠と噛み合わなくなります。
手数の量そのものについては、施工管理が採用できない本当の理由に自社の実感を書きました。スカウトは返信率ではなく母数の勝負で、数百通で見切りをつけると、そこまでの手間ごと消えます。ここでお伝えしたいのは、その手間を出しているのが誰の時間なのかという点です。
②を数えるときは、こう分解してください。
| 誰が | 何に | 週あたり |
|---|---|---|
| 工事部長・所長・社長 | 候補者を選んでスカウトを送る | ◯時間 |
| 同上 | 応募と返信への対応(電話・メッセージ) | ◯時間 |
| 同上 | 面接の日程調整と、日程が合わないときの再調整 | ◯時間 |
| 同上 | 面接そのもの(同席者の分も足す) | ◯時間 |
| 事務・総務 | 書類のやり取り、条件通知書の準備 | ◯時間 |
この合計に、その人の時間あたりの人件費と、採用にかかった月数を掛けます。厳密でなくて構いません。ゼロでないことが分かれば、それでいいんです。「自社採用だからタダ」という前提が消えるだけで、判断がまともになります。
なお、この表のなかで施工管理がとくに膨らむのは日程調整の行です。候補者の側も現場にいるので、平日の日中は電話にも出られません。会える枠を作るところから設計する話は施工管理の選考日程の作り方に書きました。
費目③:決まらない間に出ていった分。施工管理でいちばん大きいのはここです
ここからが本題です。
建築施工管理技術者の有効求人倍率が 8.62倍(全職業平均は1.25倍)という市場の形は、施工管理が採用できない本当の理由に統計で整理しました。出典は厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「建築施工管理技術者」(ハローワーク求人統計データ・令和7年度)と、厚生労働省「一般職業紹介状況」令和6年度分です。
ここで単価の話に効いてくるのは、倍率そのものではありません。倍率が高い=候補者が複数社と並行している=1社あたりの決まるまでが長くなりやすいという、時間のほうです。そして決まらない間、席は空いたままになります。
空席の間、仕事のほうは消えてくれません。誰かに乗ります。掛け持ちが1現場増える。管理する範囲が広がる。これが施工管理の空席が高くつく理由の1つ目です。
2つ目が、逃げ道が塞がったことです。2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制(原則、月45時間・年360時間)が適用されました(出典:厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制」2024年4月適用)。それまでは、人が足りない分を残業で埋めてしまうことが、良し悪しは別として現実的な選択肢でした。今はそれができません。残業で埋められない分は、工期か、受注のどちらかに出ます。 応援を頼めば追加の費用が出ますし、頼めなければ引き合いを断ることになります。
だから、施工管理の採用単価を考えるときは、先に空席1ヶ月の値段を置いてください。出し方は、次のどれか1つで構いません。
- 粗利から出す:施工管理1人が年間で回している現場の粗利 ÷ 12。これが、席が空いている1ヶ月で稼げていない額です。
- 外に出した費用から出す:空席を埋めるために応援・外注に出した分の、1ヶ月あたりの追加費用。
- 断った引き合いから出す:人が足りないという理由で見送った案件の金額。1件でも思い当たれば、それがそのまま答えです。
3つとも出す必要はありません。1つ出せば、話の前提が変わります。
ここは会社ごとに大きく違うので、他社の数字を借りないでください。自社の数字を入れる場所です。
3つを並べると、判断が変わります
社長が選んでいる選択肢は、実は3つあります。人材紹介を使うか、自社で採るか、そして決まらないまま時間が経つかです。3つ目は選んだつもりがなくても、いつの間にか選ばれています。
| ① 出ていくお金 | ② 社内の時間 | ③ 空席の月数 | |
|---|---|---|---|
| A:人材紹介に任せる | 200万円台になることも。決まってから発生 | 少ない(面接と条件の詰めだけ) | 短くなりやすい |
| B:自社で採る | 媒体の費用のみ | 多い。しかも現場を持つ人の時間 | 進め方次第で長くも短くもなる |
| C:決めないまま | 0円 | 0時間 | 止まらない |
Cの列だけ、性質が違うのが分かると思います。①と②は、やめれば止まります。③は、決めるまで毎月出続けます。
だから、「紹介は高い」という言い方を、私はこう直したいんです。紹介は高い。ただし、席が空いたままなのはもっと高いことがある。 どちらが高いかは、空席1ヶ月の値段を出さないと比べられません。逆に言えば、それさえ出しておけば、紹介会社に依頼するかどうかで悩む時間そのものが短くなります。
もう1つ、Bを選ぶときに気をつけてほしいことがあります。自社採用は「安い」のではなく、効果が出るか分からないまま打ち続けられるかどうかの勝負になります。ここが社長にとっての本当の壁です。スカウトも、応募への即日対応も、途中でやめた瞬間に単価は計算できなくなります。採れた人数がゼロなので、割り算が成立しないからです。続けられる体制があるかどうかを、費用の前に見てください。
採用した後に、単価はもう一度動きます
もう1つだけ、単価の話で見落とされやすいところを書きます。
200万円払って1人採ったとして、その方が1年で辞めたら、実質の単価は倍になります。次にもう1人採るのに、また同じだけ必要になるからです。採用単価は、入社した日に確定しません。定着して初めて確定します。
そして、人が続いている会社に共通しているのは、特別な制度ではありませんでした。一人にかかる負担を減らしていることです。これは費目③の話とそのままつながります。空席が長引く、残った人の負担が増える、その状態のまま面接で働きやすさを聞かれて答えに詰まる、決まらない、さらに空席が続く。この輪の中に入っている会社は、採用にいくら払っても単価が下がりません。
入社前後の設計については施工管理の若手が辞める理由に書きました。単価を本気で下げたい社長ほど、こちらを先に読んでほしいです。
単価を下げたいなら、順番があります
最後に、実際にどこから手を付けるかです。効く順に並べます。
1. 求人票を直す(費用ゼロ)
いちばん効いて、いちばん安いのがここです。私たちが不動産営業の自社採用で、媒体を替えずに求人票だけを直して応募が増えたときも、触ったのは業務内容のタイトルと活躍イメージの2ヶ所でした(施工管理の採用媒体、どう選ぶ?に、これを施工管理の求人票に置き換えた形で書いています)。施工管理の書き方そのものは応募が来る施工管理の求人票の書き方へ。
単価の観点で大事なのは、この工程だけが費用ゼロで、しかも①②③の全部に効くことです。応募が増えれば③が縮み、選ぶ手間が減れば②も減ります。
いま出している求人票がどの状態か分からない場合は、施工管理の求人票セルフ添削チェッカーで先に見てみてください。年間休日と4週8閉所、残業の実態、工種と規模、資格手当まで12項目で診断できます。登録は要りません。
2. 応募が来たあとの初動を速くする
応募対応は採用活動ではなく、営業活動です。反響に翌日電話する営業がいないのと同じで、応募にも即日で返す。つながらなければメッセージを残す。ここだけで、消えていく人がはっきり減ります(応募が来たあとの24時間が勝負です)。
3. 選考のスピードを上げる
書類の結果は当日から翌営業日、面接結果は翌日から3営業日、内定は即日から2営業日。この基準を守れている会社は、体感で全体の2割ほどです(選考が遅いだけで辞退されます)。単価の話に引きつけると、選考が1週間延びるたびに、費目③が1週間ぶん積み上がるということです。ここは費用をかけずに縮められる唯一の場所なので、いちばん割がいいです。
4. スカウトの当て方を変える
送る数を増やす前に、文面を見直したほうが早いです(施工管理のスカウトで返信が来る文面)。
5. 最後に、媒体を検討する
順番を逆にしている会社が本当に多いです。媒体の入れ替えは、1から4を全部やったうえで、それでも足りないときに検討するものだと思ってください。人材紹介を使う前にやれることは人材紹介に200万円払う前ににまとめました。
試算の埋め方(数字は仮のものです)
型だけだと使いにくいと思うので、埋め方の例を置いておきます。以下の数字はすべて説明のために仮に置いたもので、統計でも実績でもありません。自社の数字に入れ替えて使ってください。
- ① 出ていったお金:人材紹介の手数料 200万円
- ② 社内の時間:面接と条件の詰めで、部長が合計10時間
- ③ 空席の月数:依頼してから入社まで3ヶ月。空席1ヶ月の値段を粗利から出して、それを3倍する
対して、自社で採る場合は①が媒体の費用だけに下がる代わりに、②が跳ね上がり、③が何ヶ月になるかは進め方次第で変わります。比べるべきは①だけではなく、この3列の合計です。この形で紙に書き出してみると、自社がどこで損をしているかが、だいたい1回で見えます。
施工管理の採用単価チェックリスト
- 直近1年で採用にかけた費用を、紹介・媒体・その他に分けて出したか
- 採用に関わった社内の人と、その時間を数えたか(現場を持っている人の時間は特に)
- 空席1ヶ月の値段を、粗利・外注費・断った案件のどれか1つで出したか
- いま空いている席が、何ヶ月空いているかを把握しているか
- 「決めないまま」も選択肢の1つとして費用が出続けていることを、社内で共有したか
- 採用した人が1年後に残っているかまで含めて、単価を見直しているか
- 媒体を替える前に、求人票と初動を直したか
よくある質問
Q. 施工管理の人材紹介の手数料は、いくらが相場ですか。
A. 理論年収の30〜35%が業界の相場です。料率自体は職種で大きく変わりませんが、施工管理は理論年収が高くなりやすいため、結果として200万円台になることも珍しくありません。手数料の前にやれることは人材紹介に200万円払う前ににまとめています。
Q. 自社で採ったほうが安いのではないですか。
A. 出ていくお金は下がります。ただ、その分は社内の人の時間で払っています。施工管理の場合、その時間を出すのは現場を持っている方であることが多いので、時間の値段は他の職種より高くつきます。「安い」ではなく「お金を手数と時間に置き換えた」と捉えるのが正確です。
Q. 空席1ヶ月の値段は、どうやって出せばいいですか。
A. 3つのうち出しやすいもの1つで構いません。施工管理1人が回している現場の年間粗利を12で割る、応援や外注に出した1ヶ月分の追加費用を見る、人が足りなくて断った引き合いの金額を見る。厳密さより、ゼロではない数字を1つ置くことのほうが大事です。
Q. 採用単価を下げるのに、いちばん効くのは何ですか。
A. 求人票です。費用がかからず、効果が出るまでの時間も短いので、費用対効果でいちばん上に来ます。次に効くのが応募後の初動と選考スピード。媒体の入れ替えは最後です。順番を逆にすると、直っていない原稿を別の場所に置き直すだけになります。
Q. 採用にかけた費用が無駄になったかどうかは、いつ分かりますか。
A. 入社した時点ではまだ分かりません。1年残って、現場を任せられる状態になって初めて単価が確定します。だから定着の設計まで含めて予算を組んでください(施工管理の若手が辞める理由)。
濱名勇輝/元・不動産特化の人材紹介エージェント(株式会社Jingas COO)。エージェントとして上位の成績を残し、メンバーのマネジメントや教育制度の構築も担当。採用の現場を「送り出す側」と「育てる側」の両方から見てきました。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
採用単価の話は、突き詰めると「どこにお金を置くか」ではなく「どこで時間を失っているか」の話です。請求書の200万円は目に見えますが、席が空いたままの3ヶ月には請求書が来ません。来ないだけで、確実に払っています。今日はまず、いま空いている席が何ヶ月空いているか、それだけ数えてみてください。
求人票の見直しから媒体・スカウトの運用、選考支援、定着まで、採用の実務ごと私たちが人の手で伴走します(基本料金は月額10万円)。まずは無料相談で、いまの採用単価がどの費目で膨らんでいるか、一緒に見させてください。
この記事で参照した一次情報
- 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag「建築施工管理技術者」(有効求人倍率/ハローワーク求人統計データ・令和7年度)
- 厚生労働省「一般職業紹介状況」令和6年度分(全職業平均の有効求人倍率)
- 厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制」(2024年4月適用・原則 月45時間/年360時間)