歩合制・インセンティブの営業はきつい?給料ゼロの月の有無と、35歳以上で辞める人・続く人の違い
歩合制やインセンティブの営業は、死ぬほど大変な仕事ではありませんが、すぐには稼げません。35歳以上で辞める人がつまずくのは仕事の重さより「稼げるまでの時間」で、採用の現場では2年目に年収500万円を超えている人がほとんどです。会社に雇われて働くなら、労働基準法27条の保障給と最低賃金が給料の下限になります。
求人票に「インセンティブあり」「歩合給」と書いてあると、稼げそうだと思う一方で、「きつい」「成果が出ないと給料が出ない」という話も気になります。40代で家族がいて、今の年収が400万円前後なら、収入が減る月があるかもしれない仕事に移るのは怖いはずです。
この記事では、歩合制・インセンティブの営業の「きつさ」を、お金の仕組みと時間の2つに分けて整理します。給料の下限を決める法律は、条文と厚生労働省の資料で確かめた範囲だけを書きました。業種ごとの歩合率の相場、特定の会社の評判、ブラックな会社の見分け方、歩合制が多い職種、1日の流れは、確かな一次情報がないため扱いません。
歩合制・インセンティブの営業は、本当にきつい?
死ぬほど大変な仕事ではありません。ただ、すぐには稼げません。採用の現場で見てきた限り、きついと感じて辞める人がつまずくのは仕事の重さではなく、「稼げるようになるまでの時間」です。
きついと言われるのは、何がきついから?
歩合の仕事について一般に挙げられる「きつい理由」は、だいたい次の3つです。
- 毎月の収入が一定しない
- 数字で評価される
- 成果が出るまで、働いた分が給料に見えにくい
35歳以上・未経験が最初につまずくのは、3つ目の、成果が出るまで耐えられるかどうかになります。今の仕事は、働けば毎月同じ給料が入る。歩合のある仕事は、最初の数か月は動いても数字にならない期間があります。その差を知らずに入ると、仕事そのものより「話が違う」という気持ちがきつくなります。
「大変な分、すぐ稼げる」と思っていると何が起きる?
辞める人に共通しているのは、「大変な仕事だから、その分すぐに稼げる」「簡単に稼げる」と思って入っていることです。実際には、稼げるようになるまでに時間がかかります。
入る前の想像が「3か月で稼げる」なら、半年たっても伸びない状況は想定外です。想像が「2〜3年で上がればいい」なら、同じ半年も想定の範囲に入ります。仕事は同じでも、時間の見立てで「きつさ」が変わるということです。
歩合制とインセンティブは、何が違う?
求人票の言葉は会社によってまちまちですが、大きく分けると次の2つです。
- 固定給+インセンティブ:毎月の固定給があり、成果に応じた額が上乗せされる
- 歩合制(法律上は出来高払制):成果に応じて決まる部分が大きい給料
どちらも、雇用契約なら法律で守られる下限があります。仕組みの基本は歩合制とは?完全歩合制は違法かにまとめたので、ここでは「給料がゼロになるのか」という不安に絞って答えます。
歩合制だと、給料がゼロになる月はある?
会社に雇われて働くなら、ゼロにはなりません。労働基準法と最低賃金法が下限を決めているからです。ゼロもあり得るのは、雇用ではなく業務委託で働く場合です。
労働基準法27条の「保障給」とは?
労働基準法第27条は、次のように定めています。
出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない。
成果が少ない月でも、働いた時間に応じて一定額を払う義務が会社にある、という意味です。これを保障給と呼びます。
保障給は、いくらと決まっている?
条文には金額が書かれていません。「労働時間に応じ一定額」とあるだけです。
いくらになるかは会社ごとに決まります。入社前に「保障給はいくらか」を会社に聞き、書面で確かめてください。
最低賃金は、歩合給にも適用される?
適用されます。最低賃金法施行規則第2条は、出来高払制の賃金を時間あたりに直す方法を決めています。その賃金算定期間に出来高払制で計算した賃金の総額を、出来高払制で働いた総労働時間で割った額が、最低賃金を下回ってはいけません。
令和8年度の全国加重平均は1,177円で、最も高い地域は1,280円、最も低い地域は1,085円です。仮に1か月160時間働いたとすると、全国加重平均で計算した下限は18万8,320円になります。実際の下限は、働く都道府県の最低賃金で決まります。
歩合給でも、残業代は出る?
歩合給も残業代の対象です。労働基準法施行規則第19条に、出来高払制の賃金について、時間外や深夜の割増賃金を計算するときの元になる額の出し方が定められています。歩合給だから残業代がない、ということにはなりません。自分の給料で具体的にいくらになるかは、勤務先か労働基準監督署で確かめてください。
業務委託の「完全歩合」だと、何が違う?
業務委託(個人事業主として仕事を請ける形)では、保障給や最低賃金のルールは原則として適用されません。報酬が成果だけで決まり、ゼロの月があっても契約として成り立ちます。
ただし、労働者に当たるかどうかは契約書の名前では決まりません。厚生労働省は「契約の形式や名称にかかわらず、実態を勘案して総合的に判断される」としていて、全国の労働基準監督署に、自分が労働者に当たるかもしれないと考えるフリーランス向けの相談窓口を置いています(平日8時30分〜17時15分)。
給料の形ごとの守られ方を並べると、次のとおりです。
| 給料の形 | 成果がゼロの月 | 最低賃金 | 残業代 |
|---|---|---|---|
| 固定給だけ | 固定給が出る | 適用される | 対象 |
| 固定給+インセンティブ | 固定給が出る(上乗せがないだけ) | 適用される | 対象 |
| 雇用の歩合制(出来高払制) | 保障給が出る(労基法27条) | 歩合の総額÷働いた総時間で比べる | 対象(計算方法は労基則19条) |
| 業務委託の完全歩合 | ゼロもあり得る | 原則として適用されない | 原則として無い |
出典:労働基準法第27条、最低賃金法施行規則第2条、労働基準法施行規則第19条(e-Gov法令検索)、厚生労働省「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」。業務委託の行は、働き方の実態から労働者と判断されない場合です。
転職して、年収はどう変わった?
1年目は下がることもありますが、数年で前の年収を大きく超えた人がいます。採用の現場で見てきた4人です。移った先の給料の形は人によって違います。
年収400万円 → 5年目に900万円。
年収550万円 → 3年目に850万円。
年収350万円 → 3年目に600万円。
残業が多くて年収450万円 → 3年目以降に年収2000万円。残業もぐっと減らしています。
※4人とも採用の現場で見てきた方です。年収は目安、何年目かは人によって違います。個人の実績で、同じ結果を約束するものではありません。
4人とも、今の年収になったのは3〜5年目です。ブライダル業界にいた方は営業未経験で移り、残業をして450万円だった頃より、働く時間を減らして年収を上げました。「稼げる仕事=長時間働く仕事」とは限らない例です。
1年目の年収は、下がる?
固定給の部分だけで見ると、1年目は下がることが多いです。それでも、インセンティブを合わせると上がる人は多くいます。
固定給だけで年収が上がりやすいのは、同じ職種に移るときです。未経験の職種に移るなら、固定給は下がる前提で、インセンティブで取り返す設計だと考えておくと、入社後に慌てません。初年度にしっかり取り組めば、前の年収を超えられる会社も多くあります。
何年で、前の年収を超えられる?
採用の現場で見てきた例では、年収が大きく変わった「数年後」は2〜3年が中心です。上の実例のように、5年目で900万円になった人もいます。監修者の実感では、転職して2年目なら年収500万円を超えている人がほとんどです(続けている年数は人によってまちまちです)。
だからこそ、転職は1〜2年ではなく5年単位で、給料の合計で比べてください。たとえば1年目に50万円下がっても、3年目から前より年30万円上がれば、5年の合計では40万円上回ります(仮の数字です)。
入社から5年まで、何が起きる?
監修者の話を、時期ごとに並べました。保存しておくと、入社後に「今どこにいるか」を確かめられます。
| 時期 | 監修者の話 | 監修者がすすめること |
|---|---|---|
| 入社〜3か月 | 成果が見え始めるのは、早い会社で3か月ほど。職種によっては、それより長くかかる | 知識を学ぶ。先輩から吸収する |
| 1年目 | 固定給の部分は前より下がることが多い。インセンティブで上がる人も多い | ― |
| 2〜3年目 | 実例で年収が大きく変わった「数年後」は、このあたりが中心 | ― |
| 5年 | 5年の給料の合計で見ると、格段に上がるケースも十分にある | 1年ごとではなく、給料の合計で考える |
※監修者が採用の現場で見てきたことを時期ごとに並べたものです。「―」は監修者の話がない時期です。会社・職種・個人によって大きく違い、この通りになることを約束するものではありません。
歩合の営業で辞める人は、どこでつまずく?
つまずく場所は3つあります。入る前の時間の見立て、成果が出ない時期の受け止め方、会社の選び方です。
成果が出ない時期に、何が起きている?
35歳以上・未経験で入った人が最初につまずくのは、成果が出るまで耐えられるかどうかです。辞める人は、成果が出ないことを怖がりすぎています。
固定給の仕事を長く続けてきた人ほど、「今月の数字がゼロ」という状態に慣れていません。成果が見え始めるのは早い会社でも3か月ほどで、職種によってはさらに時間がかかります。そう知ったうえで入れば、数字がゼロの月をそのまま「向いていない」と受け取らずに済みます。
単価で、稼げるまでの時間は変わる?
単価による違いは大きいです。安いものを大量に売る仕事より、1件の値段が高いものを売る仕事の方が、成果が出るまでに時間はかかるものの、楽だったりもします。種類ごとの比較は営業に向いてる人・向いていない人にまとめました。
自分が受ける求人がどちらなのかで、「何か月で数字が出る想定か」は大きく違います。ここは面接で聞く項目に入れてください。
給料の条件だけで、会社を選んでいない?
歩合の求人には「インセンティブ上限なし」のような言葉が書かれていることがあります。けれど給料の条件だけで選ぶと、合わない会社に入り、同じ理由でまた辞めることになるケースも多くあります。
40代・50代で転職して「失敗した」と話す人の理由で一番多いのは、「話とちがった」です。合うかどうかは、条件より、数字の追い方や働き方が自分に合うかで決まります。
未経験で入った最初の1年は、どう過ごせばいい?
監修者が、未経験で入った最初の3か月にすすめているのは、知識を学ぶことと先輩から吸収することです。このあと、数字の追い方と家族への伝え方もあわせて見ていきます。
最初の3か月は、何をすればいい?
やることは2つです。商品や業界の知識を学ぶこと、先輩から吸収することです。
接客出身の人は第一印象の良さが強みになる一方、契約を取ることと新しい知識を覚えることで苦労しやすいので、知識の時間を多めに取ってください。40代で未経験から営業に移るとき会社が何を見ているかは、40代・未経験からの転職は厳しい?にまとめています。
数字を追うのが苦手でも、続けられる?
続けられます。営業が数字を追う仕事なのは本当です。ただ、数字の追い方は会社によって違います。
追い方が自分に合う会社を選べば、苦手でもやっていけます。「詰められる」「ブラック」というイメージについては、「営業はやめとけ」は本当?で整理しています。
家族に「大変なんじゃないの?」と言われたら?
年収400万円前後の40代が転職を考えるとき、家族の反応で多いのは「年収下がるじゃん」「大変なんじゃないの?」です。監修者の答えは「大変です」。そのうえで、年収を上げるには時間を使うしかないこと、挑戦できるのは今しかないことを伝えています。
家族を説得できた人は、決める前から家族に話していました。たとえば上の早見表を見せながら「1年目は下がるかもしれない。2〜3年でここまで上げたい」と、時間の見立てを共有するのが話しやすい方法です。
歩合のある求人に応募する前に、何を確かめる?
求人票で分かることと、面接で聞くことを分けて確かめます。年収の話は、普通に伝えて大丈夫です。「給料を上げたい」という本音も、面接でそのまま言って大丈夫です。
応募前に確かめる8項目は?
- 雇用契約か、業務委託契約か
- 固定給(保障給)はいくらか。成果がゼロの月でも生活できる額か
- インセンティブの計算方法。「何を1件決めると、いくら入るか」
- 入社して何か月目くらいから成果が出る人が多いか
- 扱う商品は、安いものを数多く売るのか、1件の値段が高いものか
- 入社2〜3年目の、平均ではなく真ん中あたりの人の年収
- 数字をどう追う会社か(誰が、何の数字を、どのくらいの頻度で見るか)
- 残業代の扱いと、働く都道府県の最低賃金
求人票だけで、良い会社か分かる?
分かりません。求人票のどこを見れば良くない会社を見分けられるかは、監修者にも「分からない」ことです。この記事でも見分け方は作りません。
その代わりにできるのは、上の8項目を入社前に聞き、答えを書面や面接のメモに残すことです。入社後の「話とちがった」は、入社前に聞いた話と実際が違うことで起きます。聞いて、残しておけば、比べることができます。
面接で「稼ぎたい」と言っても大丈夫?
年収の話は普通に伝えて大丈夫です。選考に通った人は「稼ぎたい」「家族のために選択肢を増やしたい」と、そのまま話していました。
一方、選考で落ちた人の転職理由には「楽をして給料を上げたい」「なんか飽きた」がありました。面接の準備は35歳以上・40代の面接で落ちるのはなぜ?も参考にしてください。
歩合制の営業を、選ばない方がいい人は?
正直に書くと、移らない方がいい人もいます。
今の年収が十分にある人は?
すでに十分な年収があり、なんとなく転職したいだけなら、移らない方がいい人です。1年目に下がるかもしれない期間を、わざわざ取りに行く理由がありません。反対に、今の会社でこれから上がり幅がない人は、動いた方がいい人です。今の給料の伸びを確かめたい方は給料が上がらないのはなぜ?で年齢別のデータを見られます。
残業がまったくできない人は?
子育て中などで本当に残業が難しい人は、やめておいた方がいいと監修者は話しています。残業を調整できる人はうまくいっていますが、まったくしないのはさすがに無理です。
人と関わるのが嫌な人は?
人と関わるのが嫌な人、家で仕事をしたい人、ゆったり働きたい人は、営業に向いていません。この3つに当てはまらなければ、合う会社は探せます。
まとめ
歩合制やインセンティブの営業でつまずくのは、すぐ稼げると思って入り、成果が出ない時期に焦ったときです。会社に雇われて働くなら、保障給と最低賃金が給料の下限になり、残業代もあります。不安が大きいのは、仕組みを知らないまま求人票の数字だけを見ているときです。
厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」では、転職して賃金が増えた人は40〜44歳で45.9%、45〜49歳で46.4%、50〜54歳で39.0%で、55〜59歳では27.4%まで下がります。「あの時やっていれば」と後から思わないために、今のうちに、自分に合う稼ぎ方の会社があるかだけは確かめておきませんか。数字の追い方と単価が合う会社なら、未経験からでも十分に続けられます。
「歩合制 インセンティブ 営業 きつい」が自分の場合どうなのか、話して確かめたい方へ
よくある質問
歩合制やインセンティブの営業はきついですか?
きつさの中身は、仕事の重さより稼げるまでの時間です。採用の現場で見てきた辞める人は、「大変な分だけ、すぐに稼げる」と思って入った人です。何年で稼げるようになるかを知ってから入ると、同じ仕事でも受け止め方が変わります。
歩合制だと、給料がゼロになる月はありますか?
会社に雇われて歩合制で働く場合、労働基準法第27条により、会社は労働時間に応じた一定額の賃金(保障給)を保障しなければなりません。最低賃金も適用されます。業務委託契約の場合はこれらが原則として適用されないので、契約の形を確かめてください。
保障給はいくらもらえますか?
労働基準法第27条の条文には、保障給の金額は書かれていません。「労働時間に応じ一定額」とあるだけです。一方で最低賃金は歩合給にも適用され、歩合給の総額を働いた総時間で割った額が、最低賃金を下回ってはいけません。
未経験で歩合の営業に移ると、1年目の年収は下がりますか?
固定給の部分だけで見ると、1年目は下がることが多いです。一方で、インセンティブの分で年収が上がる人も多いです。固定給だけで上がりやすいのは、同じ職種に移るときです。初年度にしっかり取り組めば、前の年収を超えられる会社も多くあります。
インセンティブの営業で、辞める人と続く人は何が違いますか?
辞める人は、成果が出ない時期を必要以上に恐れています。監修者が、未経験で入った最初の3か月にすすめているのは、知識を学ぶことと先輩から吸収することです。成果が出るまでの期間は職種によって大きく違うので、入社前に聞いておいてください。
業務委託の「完全歩合」は違法ですか?
業務委託契約なら、報酬が成果だけで決まる形でも契約として成り立ちます。ただ、労働基準法上の労働者かどうかは、契約の名前ではなく働き方の実態で判断されます。厚生労働省は、自分が労働者に当たるかもしれないと考えるフリーランス向けの相談窓口を、全国の労働基準監督署に置いています。
- 給料が上がらず、このままでいいか迷っている方
- 未経験の仕事に移りたいが、35歳以降で大丈夫か不安な方
- 転職エージェントで紹介できる求人がないと言われた方
人材紹介の仕事に約5年携わり、人材紹介会社で事業部の責任者も務める。これまで数千人以上の求職者と面談。営業職への転職支援を得意とする。印象に残っているのは、営業未経験だった40代の方が転職し、3年目以降に年収2000万円を超えたこと(個人の実績で、全員が同じようになるわけではありません)。「年齢に関係なく、キャリアは変えることができる。」
プロフィール ›
執筆:35歳からの稼げる転職 編集部。採用の現場で見てきた実例と、公的な統計をもとに書いています。